春の全国高校選抜大会で2連覇を果たしたボクシング・ライトウェルター級の田中空(神奈川・武相3年)。破壊力抜群の右ストレートを武器に、高校生年代の国内大会で無敵を誇る。原動力はボクシングを楽しむ気持ち。宮崎インターハイでもそのスタンスは変わらない。(文・写真 小野哲史)

パワフルなパンチが武器の田中空。宮﨑インターハイは初出場だが、「楽しみ」と語り、気負いはない

マイク・タイソンに憧れ

低い重心から力強いパンチを繰り出し、相手を圧倒する。田中のファイトスタイルは、1980年代から90年代にかけて活躍した元世界王者のマイク・タイソンをほうふつとさせる。「大きな相手を次々と倒すところがすごいし、自分のスタイルを貫く生き方に憧れます。タイソンのようなボクシングを目指しているので、たまに映像を見て動きをまねしています」

平日は朝練でロードワークや体幹トレーニングを行い、放課後は約2時間、サンドバッグ打ちや実戦練習などで汗を流す。さらに帰宅後、父の会社にあるジムでも練習する。「中学までは朝練をしていなかったし、練習時間ももっと短かった。高校に入って技術や体力もそうですが、特にメンタルが鍛えられた気がします」

抜群の勝負勘

ボクシングの魅力を「打ち合っているときの駆け引きにスリルがあってワクワクする」と話す。何度か経験した国際大会で「海外選手は体の強さや距離感、パンチの軌道が日本人と全然違う」と知り、6月のハンガリー遠征以降は、「左のジャブをもっとうまく使う」という課題に取り組んできた。

「早い段階で相手のスタミナを奪って、勝負に持ち込む」のが理想とする展開だ。ボクシング部顧問の梶田太郎先生は田中を「小さいころからやっているだけあって勝負勘は抜群。試合では緊張もある中で、いつも楽しんでいる印象を受けます」と評する。

最初で最後のインターハイ

小中学生のころから数々のタイトルを獲得し、高校生世代の国内大会でまだ一度も負けていない。にもかかわらず、インターハイは意外にも初出場となる。2年前はアジアジュニア選手権と日程が重なり、昨年は拳をけがして欠場を余儀なくされたからだ。田中は最初で最後となるインターハイを「自分がどれだけできるか楽しみです」と心待ちにしていた。

宮﨑インターハイには武相から3人が出場。左から長尾夢羽、田中空、藤田時輝

武相からは田中の他に、フライ級の藤田時輝とバンタム級の長尾夢羽(ともに3年)もインターハイに出場する。「理想は相手と距離を取って、きれいなボクシングをすること。過去2回のインターハイは3位と2位だったので、3度目の今回は優勝したい」(藤田)、「武器はリーチの長さ。初の全国大会ですが、自分のボクシングをして一つでも多く勝ちたい」(長尾)と意気込んでいる。

プロフィル

たなか・そら 2001年6月1日、神奈川県生まれ。渡田中卒。大橋ボクシングジム所属。祖父と父が元プロボクサーで、3歳からボクシングを始めた。中学までに全国大会で9冠。2017年アジアジュニア選手権に優勝し、MVPを獲得した。18、19年全国高校選抜大会優勝。165センチ、64キロ(試合時)。