文学部と聞くと、読書好きな人がいくイメージを思い浮かべがちだが、実際にどんな学問なのか、将来役に立つのか分かりにくい…。そんな高校生に向けて、大学の文学部では何が学べ、どんな力が身に付くのか、大阪大学文学部の岡田裕成教授に解説してもらった。 (木和田志乃)

文化の背景や歴史を探究

――文学部では何を学びますか?

哲学、歴史、文学、芸術など多様な分野を含む人文学を学びます。人間が作り出してきた文化について、地域や時代、領域を超えて研究対象を探索し、さまざまな方法を用いて研究しています。

文学部というと「いつも本を読んでいる」というイメージがあるかもしれません。確かに、文字で書き残されたものの研究は文学部で広く行われています。しかし、絵画・彫刻・建築、あるいは文字のない時代の発掘品も私たちの研究対象です。現地調査やフィールドワークを行う分野もあります。

「世界の意味」探る

――文学部で学ぶと、どんな力が身に付きますか?

論理的な思考力や語学力、コミュニケーションのスキルなど、文学部での学びが養う力は幅広いと思います。しかし一番大切なのは、人間として生きていく根源的な力です。文学部では、対象は異なっていても、「人間とは何か」「この世界にはどのような意味があるのか」といった大きなテーマに取り組んでいますので、人間と社会について深く理解する力が養われます。すぐに役立つスキルではないかもしれませんが、簡単には解決できない大きな問題に直面した時に問われる力を身に付けることができると思います。

「就職しにくい」は誤解

――文学部で学んだことは就職してから役立ちますか?

以前、企業の人事担当の方から「文学部出身者は、ものごとを深く考える人が多い」と言っていただいたことがあります。例えば、企業の社会的責任に関わるような複雑な問題が起きた時「立場や考え方の違う人たちを理解し、調整する力を発揮する」とおっしゃるのです。人間と社会について深く理解する力が社会でも役立っていると思います。

――卒業後の進路は?

マスコミや製造業、金融、IT、サービス業など幅広い分野の企業への就職のほか、教員、公務員、大学院進学など進路はさまざまです。文学部は就職しにくいと言われますが誤解です。企業の採用担当者からは学部で区別することはないとも聞きます。企業も多様な人材を求めています。

自分のこだわりを大切に

――文学部で学ぶのに向いているのはどんな人ですか?

文学部に向いているのは「好きなものがある人」です。好き、というのは単純な感情ですが、モチベーションなしに人文学は成り立ちません。大学では哲学、歴史、文学からサブカルチャー、ポップミュージックまで幅広い研究ができます。

――高校生の間に身に付けておいた方がいいことは?

基本的な勉強は幅広くしておくと良いでしょう。いわゆる文系の科目はもちろんですが、数学や理科も重要です。今ではAIや臓器移植、クローン技術への一定の理解なしに人間や生命について考えることは難しくなっています。

――高校生にメッセージを。

文学、芸術、歴史、哲学などに興味を持ったなら、その気持ちを大切にしてください。オタクと言われてもこだわりを持って本を読んだり調べたりする経験をしてください。そして文学部に来て好きなことを徹底的に研究してください。期待しています。