試合が迫ってくると、気持ちが昂ったり、逆に不安に襲われたりする。本番まであと数日という時期になれば、そこから技術や体力面で劇的なレベルアップは難しい。だからこそ、心の準備が重要になってくる。試合当日、直前までの心の整え方について、スポーツ心理学が専門の高妻容一教授に聞いた。(小野哲史)
――試合前日はどう過ごせばいい?
できるだけ毎日のペースを崩さず、試合会場への持ち物を最終確認しよう。可能であれば、ビデオなどの情報から相手や相手チームを理解し、分析し、その対策を立てることで、「これで大丈夫」という自信を持てる。前日から宿泊するなら、チームメイトとポジティブな会話をし、食事や夜の過ごし方を楽しくリラックスしたものにする。もし緊張して眠れなくても焦らず、目をつぶって横になっているだけで心身の準備はできる。
――試合当日はどう過ごせばいい?
必ず食事を摂って1日の栄養を補給しよう。時間に余裕を持って家やホテルを出発し、電車やバスでの移動なら、好きな音楽を聴いたり、チームメイトと楽しい会話をしたりして、心の準備をしながら会場に向かう。会場についたら、大会関係者や他校の選手に気持ちよくあいさつしよう。グラウンドや体育館を下見し、コンディションを確認しておくと、いざ試合に入ったときに予期せぬ状況に陥るリスクを避けられる。
――試合までの理想的な時間の過ごし方は?
目標を思い出し、自分のしたいこと、やるべきことをイメージする。いつも通りのリラクセーションとサイキングアップ、身体のウォーミングアップを行い、「あとは自信を持ってプレーするだけ」という状況にしておこう。
――試合中の気持ちの切り替えは?
勝っているときや相手と競り合っているときは、チャレンジする気持ちを継続する。ミスをしたり、相手に先行されたりしたときは、セルフトークや前向きな声かけでプラス思考にする。気持ちを切り替えるためのルーティンをあらかじめ持っておくことが望ましい。そして何より、試合を徹底して楽しむこと。楽しむことで自分の力を最大限に発揮でき、苦しい場面を乗り越えることができる。
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高妻容一 教授(東海大学体育学部競技スポーツ学科)
こうづま・よういち メンタルトレーニング・応用スポーツ心理学研究会代表。数多くのスポーツ選手やコーチのメンタルトレーニングを指導してきた。「基礎から学ぶ!メンタルトレーニング」など著書多数。