高校生のためのメンタルトレーニング講座2 やる気を出すには

スポーツの現場では、よく「やる気を出せ」という言葉が使われるが、具体的な方法を理解し、実践している指導者や選手は少ない。どうすればやる気を高めることができるのか、スポーツ心理学が専門の高妻容一教授に聞いた。(小野哲史)

――やる気を高めるには?

まず「自分がどうなりたいか」という夢や目標を明確にし、それを達成するためのプランを考える。ノートに50年後、30年後、10年後、5年後、3年後、2年後、1年後、今年、半年、今月、今週、そして今日、今(現時点)の目標をどんどん書き、その横にそのためにどうするべきかをできるだけ具体的に記入していく。

常に先を見据えている人はすらすら書けるが、そうでない人はなかなか書けない。ここで競技生活や高校生活にタイムリミットがあることに気づけば、「このままではいけない」という危機感が生まれ、競技に向き合う意識や姿勢が変わる。

――自分の気持ちをうまくコントロールするには?

心を落ち着けて集中し、無心の状態を一度作る「リラクセーション」と、気持ちののりや闘志を高める「サイキングアップ」という手法が有効。このリラクセーションとサイキングアップは、セットで行わなければ本来の意味を成さない。リラクセーションは心のストレッチ、サイキングアップは心のウォーミングアップと捉えるといいだろう。また、試合で生かすには、繰り返し何度もトレーニングし、完全に自分のものにする必要がある。

――リラクセーションの方法は?

気持ちが落ち着く音楽を聴く。深呼吸をして心を整える。自分で行うマッサージで身体に刺激を与えて気持ちを切り替える。胸を張って上を向き、笑顔を作る。トイレで用を足す際、ネガティブな考えもすべて出し切ると捉えると良い。

――サイキングアップの方法は?

家族や先生、チームメイトに元気にあいさつをする。相手を褒める。気持ちがのる軽快な音楽を聴く。音楽に合わせて呼吸を早く強くする。エアロビクスダンスのように音楽に合わせて体を動かす。考え方や話す言葉をポジティブなものにする。ペアを組んで大声で本気でじゃんけんをする。勝ったら思い切り喜び、負けたら思い切り悔しがる。

 

高妻容一 教授(東海大学体育学部競技スポーツ学科)

メンタルトレーニング・応用スポーツ心理学研究会代表。数多くのスポーツ選手やコーチのメンタルトレーニングを指導してきた。「基礎から学ぶ!メンタルトレーニング」など著書多数。