自分の最高のプレーをするため、あるいは新しい技やフォーメーションを効率よく身につけるには、イメージトレーニングが有効だ。一流選手ほど、理想のプレーを鮮明にイメージし、そのイメージのままに動くことができる。イメージトレーニングのやり方を、スポーツ心理学が専門の高妻容一教授に聞いた。(小野哲史)

――イメージトレーニングのコツは?

大切なのは、イメージを明確に、鮮明に、現実的に思い描くこと。目に見える景色、音、におい、味、感触など、五感のすべてがイメージとともにあるようにする。イメージには、人がプレーしている「外的イメージ」と、自分がプレーしている「内的イメージ」があり、外的イメージで視覚的により詳しい、正確性のある映像を思い描き、内的イメージでプレー中の自分の筋肉や全身の感覚を高めていくとよい。

――頭の中で考えることがイメージトレーニング?

練習日誌を書くこともイメージトレーニングになる。その日の練習や試合を思い出しながら書き、体を動かしながら再現してみる。その上で、「明日の練習や試合でこうしたい」「こうすれば成功する」とイメージする。明日は、「後はやるだけ」といえるだけの状態を作る。なお、イメージトレーニングは、スポーツだけでなく勉強や仕事、普段の生活でも十分に活用できる。

――いい練習をしたり、試合で力を発揮したりするための集中の仕方は?

集中力がないと、好不調の波が大きくなる。安定したパフォーマンスをするには、メンタルトレーニングを毎日コツコツ行い、集中力を磨くしかない。その一つの方法が、プレー前の動作を一定にし、リズムや呼吸、心を安定させる「ルーティン」。大リーグで活躍するイチロー選手は、打席までの歩き方や、打席に入ってバットをぐるりと回して構えるまでの動作を常に同じにしている。このルーティンによって、自分のリズムを取り、集中力を高めている。

また、目を使った方法もある。練習場や試合場のある一点(場所)を自分で決め、そこを見つめることで集中力が高まり、回復する。

 

高妻容一 教授(東海大学体育学部競技スポーツ学科)

こうづま・よういち メンタルトレーニング・応用スポーツ心理学研究会代表。数多くのスポーツ選手やコーチのメンタルトレーニングを指導してきた。「基礎から学ぶ!メンタルトレーニング」など著書多数。