2018年11月23日~25日の3日間、全国規模の高校生映画コンクール「eiga worldcup2018」が東京工芸大学・中野キャンパスで開催された。今大会は、全国各地の55校から過去最多となる144本もの映画が出品された。そこで今回は、数多の作品の中から3本をピックアップし、制作した高校生に製作秘話や大会の感想などを聞いてみた。話を聞いたのは、「ぴんくかくてる」の東北生活文化大学高校、「プロジェクトO」の神奈川県立大磯高校、そして「SUN」の東大寺学園高校の3校だ。

1 東北生活文化大学高校美術デザイン科「ぴんくかくてる」

 

ボディペイントに傾倒する女子高校生・チヒロの孤独を描いた本作。チヒロは、自分とは真反対の個性的な友人に心惹かれていくうちに、自分らしさを見出していく。「私の友人が中学時代、変わった趣味をもっていて、それがもとで馬鹿にされた過去がありました。でも少しだけでも声を上げれば、絶対にどこかに仲間がいると思いまして。その声を出す力になれたらいいなと思って、この作品を撮りました」。製作を担当した山崎鈴花(2年)さんは、映画作りの思いをこう語ってくれた。

そして山崎さん自身も、ちひろの孤独と重ね合わせる部分もあったという。「やっぱりひとりって辛いんですよね。孤独に耐えて、個性をなくしていくので」。だからこそ、この作品にかける思いは強い。「これを完成させないとチヒロちゃんは死んじゃうなと思って。誰にも見てもらえなくなってしまう。普遍的なテーマだと思いますが、何よりも身近なテーマだと思うので、これを見て、少しでも誰かのプラスになればと思います」

山崎鈴花さん(2年)

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2 神奈川県立大磯高校SF研究部「プロジェクトO」

 

ジャッキー好きのジャッキー好きによるジャッキー好きのための映画。神奈川県立大磯高校の「プロジェクトO」は、監督・脚本を務めた斎藤竜一君(3年)から香港の映画スター、ジャッキー・チェン氏へのオマージュ的な作品だ。

衝撃的な出会いだった。「夕飯時にテレビで見ていたら、プロジェクトAが放送されてて。飯を食うのにやたら時間がかかって仕方なかったんですよね」。それ以来、ジャッキーの世界にのめり込んでいった。

「この映画は、ジャッキーに対する憧れが原動力でした。彼の映画って、何も考えなくても楽しいんですよ。ただ見ているだけで楽しくて、かっこいい。自分もそういう映画を作ってみたいなと思ったんです」

その上で製作チームの雰囲気づくりは特に意識した。ただスタッフに指示を出すだけでは、ジャッキーの映画には近づけない。レンタルビデオショップでジャッキーの映画を借りて演者への世界観の共有を図った。「あとは現場では、何より監督が一番楽しんでいないと、みんな付いてきてくれない。現場の雰囲気作りも、仕事のひとつだと思います。とにかく明るく、テンションを高くやっていました」

その甲斐あってか、BSスターチャンネル賞を受賞。「何かに熱中することと、みんなで協力してひとつのものを作り上げることの楽しさや辛さを感じました。今いいこと言ったな、俺(笑)」。最後に見せた照れ笑いに、受賞の喜びが垣間見えた。

斎藤竜一君(3年)

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3 東大寺学園高校AKTスタジオ「SUN」

 

最後に話を聞いたのは、東大寺学園高校の広瀬瑛登君(3年)。地域部門において「色」が映画甲子園賞を受賞した同校だが、自由部門に出品した「SUN」は入賞ならず。家でゲームばかりしている青年が、突然現れた一人の青年との交わりによって他者に心を開いていく過程を描いた。自由部門での受賞を狙っていたからこそ、「みなさんのレベルは高いなと感じます。いい刺激をもらいました」と悔しさをにじませた。

「今まで撮ってきた映画は、ほとんどひとりで作っていて。『SUN』でようやく人と協力しながらやってみましたが、予定合わせが大変でした。しっかり計画を立てて練っていかないとダメだなと反省しています」。はじめて仲間と協力して製作した映画だったこともあり、思い入れも強かった。「精一杯やりきったつもりだったんですけど、入選作品を観てみると、差はあるなと思います。今後はもっと作品に向き合って突き詰めて取り組みます」。この結果をバネに、来年以降の飛躍が期待される。(文・写真 山川俊行)

広瀬瑛登君(3年)

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