「テストではいつもケアレスミスで減点されている」「提出しなければならない書類や宿題を忘れてしまう」など、うっかりミスに悩む人は多いのではないだろうか。ミスが起きる原因と防ぐための方法を専門家に聞いた。 (安永美穂)

「無駄遣い」が原因

―うっかりミスをしてしまうのはなぜ?

脳の「ワーキングメモリ(短期的にとどめておける記憶)」は容量が少なく、次々と入ってくる情報を数本の腕でつかんでいるような状態です。新しい情報が入ってくると、そちらをつかむために古い情報からは手を放してしまうので、覚えておこうと思った内容も次から次へと書き換えられることとなり、それがミスの原因となります。

―どうすればミスをなくせるのでしょうか?

脳のメモリの無駄遣いをやめることが大切です。不安や心配、後悔などがあると、脳はそちらに注意を向けるので、他のことに使えるメモリが少なくなってしまいます。気になることを紙に書き出したり、家族や友達に話したりして、悩みに向けている注意を手放すことができれば、その分、別のことに注意が向けられるようになります。

 

ミスのリストを作ろう

―テストのケアレスミスをなくすためにできることは?

自分がミスをしやすいポイントを、あらかじめリストにまとめておきましょう。そして、問題を解き終えたら、リストの項目を一つずつ、その観点だけに絞って見直すようにします。漠然とチェックするのではなく、単位の間違いが多いなら「単位が合っているか」、漢字の書き間違いが多いなら「漢字は正しいか」などポイントを絞ってチェックすると、ミスを発見しやすくなります。

―覚えたつもりだったのに、テスト本番になると忘れていたということを防ぐには?

知識を定着させるには「覚える」→「思い出す」→「何を覚えていて、忘れていたかが分かる」→「忘れていたことをまた覚える」というサイクルを何度も繰り返す必要があります。勉強したら覚えたことを何も見ずに思い出す、授業が終わったらその日のポイントを友達と話し合うなど、日頃から「思い出す」ことを習慣にしましょう。

大切なことはすぐにメモ

―忘れ物をなくすコツは?

持ち物のチェックリストを作り、家を出る前に必ずチェックするのが効果的です。「リストを作るほどでもない」と感じるかもしれませんが、毎朝「何を持って行くんだっけ?」と思い出そうとすると、思い出す行為自体が脳のメモリを使ってしまい、肝心の持ち物に注意が向かず、忘れ物をしやすくなります。シンプルなリストでも、あるとないとでは大違いなのです。

―提出物の期限を忘れないようにするには?

「後でやろう」と思わずに、その場ですぐに手帳やメモ帳などにメモするか、配られたプリントなどに提出期限を書き込むようにしましょう。帰宅後すぐにプリントを机の上に置いたり、壁の目立つところに貼ったりするのも効果的です。机に置いた数学の教科書が目に留まれば「数学の宿題があった」と思い出すというように、覚えたことを思い出すきっかけとなるものを何か一つでも身の回りに置いておけば、芋づる式に記憶を手繰り寄せることができます。

人間の脳の性質上、ミスは避けられないもの。「しっかりしなきゃ」と思うだけでは、ミスはなくなりません。「人間はミスをするものだ」ということを前提として、意志の力に頼るのではなく、ミスを防ぐ具体的な対策をすることで脳の弱点をカバーしていきましょう。

 
宇都出雅巳さん
うつで・まさみ 東京大学経済学部卒。30年にわたり、心理学や記憶術を研究し、脳科学などに基づく独自の学習法を確立。「仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方」(クロスメディア・パブリッシング)など著書多数。