7月に行われた第65回NHK杯全国高校放送コンテストで、橋本由紀さん(大分・大分舞鶴高校3年)が、アナウンス部門で優勝した。小さいころからアナウンサーになるのが夢で、放送部に入った。「実は、1年生の時は一番下手だったんです……」。そう明かす橋本さんに、日本一に輝くまでの日々を教えてもらった。 (文・写真 吉永恵子)

マイクの前で、笑顔を見せる橋本さん。学校の被服室で、原稿を読む練習中

ラグビー部OBを取材

本番で読んだ原稿は、今年の初めから準備を始めた。何人かの候補に当たり、縁あって高校のラグビー部OB池本信正さんに話を聞くことができた。

話を聞くうちに、池本さんの生き方やラグビーに対する姿勢などに心を打たれ「ぜひ題材にしたい」と強く思うようになった。「原稿を書くときに、自分が興味のないことだと、読んでいるときにそれが相手に伝わってしまいます。題材を選ぶときは、なるべく自分が大好きなこと、興味があることを選ぶようにしています」

思い入れのあった原稿だが、県大会前に顧問の先生から「橋本さんの良さが出ないのでは」と指摘されて悩んだ。その時、取材時に池本さんから聞いた「目標を高く掲げて挑戦することが、自分の可能性を広げ、強みになる」という言葉を思い出した。「ぜひ、池本さんの考え方を伝えたい」という強い気持ちで自分の意志を貫く決意をした。先生の意見も取り入れ、原稿をブラッシュアップ。ラグビーの試合の場面で、試合中に池本さんが見たスタンドの情景が、聞いた人の目に浮かぶように表現を変えた。

「1番になる」と宣言

もともと声が太い方ではなかった。「実は1年生の時は一番下手。それでも『1番になる』ってずっと周囲には宣言していた」と振り返る。

腹式呼吸の練習も兼ねて、全国大会の半年前から、家で毎日50回腹筋をするようにした。「3年間いろんな大会に出ましたが、いつも2番で、悔しい思いをしてきました。NHK杯では、これが最後、後がないという気持ちで臨んだのが大きかったと思います」

仲間との時間が楽しい

放送部の仲間と発声練習する橋本さん

素顔の橋本さんは、至って普通 の高校生。練習が毎日あるため、家族よりも長い時間を一緒に過ごす同級生の仲間5人といる時間が 一番楽しいという。