授業中に発表するだけであがる、知らない人に会うと緊張しすぎて何も言えない
など、「あがり症」に悩んでいる人は多いのでは。精神科医の勝久寿先生に「あがり症」と上手に向き合う方法を聞いた。 (山口佳子)

過度に怖がらないで

「あがる」とは「相手によく思われたい」「失敗したくない」という気持ちが強くなることで、交感神経が活発になる状態だ。時には、発汗や赤面、ドキドキするなどの身体的な症状が出たり、言葉が出なくなったりする場合もある。

勝先生は「緊張すること自体は、決して悪いことではない」と強調する。堂々としてい
ても内容が全くない発表より、発表者が緊張していても内容が充実している方が好感を持
たれるはずだ。

「あがる」ことを過度に怖がる必要はない。緊張を抑えることだけに気を取られてしまうと、交感神経はますます活発になるため、発汗や赤面の身体症状がひどくなる場合もある。「緊張に対する不安を消そうとするのは逆効果です」。緊張をどう回避するかを考えるよりも、不安はそのままにして、願望や目的を達成するにはどうしたらいいかを考えよう。

腹式呼吸で落ち着こう

授業などでの発表が迫っていてドキドキするときは、よい発表をしたいという願望があ
るからだ。発表までに時間があるのなら、充実した内容になるようきちんと準備しよう。緊張していても充実した発表ができたという成功体験があれば、次の発表にも挑戦することができるだろう。失敗したと思った場合は、なぜ緊張したのかではなく、どうすれば目的や願望が達成できたかを考えることが次のステップにつながる。

授業中に突然指名されるなど十分に準備ができないときには、腹式呼吸がお勧めだ。しっかり息を吐ききることで、副交感神経を刺激し緊張を和らげることができる。また、発表の冒頭で結論を短く言うと落ち着きやすい。

失敗しても許される

勝先生は「高校時代は失敗も許される時期。緊張から回避することを考えるのではなく、目的とどう向き合っていくかを学んでほしい」と話す。

一方、「あがり症」が原因で学校に行けなくなるなど日常生活に支障が出る場合は、社交不安障害という心の病気の可能性もある。有効な治療法もあるので、心療内科や精神科などの専門医に相談してみよう。

 

 

 
勝久寿先生
(人形町メンタルクリニック院長)
かつ・ひさとし 精神科専門医。著書に「『いつもの不安』を解消するためのお守りノート」(永岡書店)。