スーパーサイエンスハイスクール(SSH)生徒研究発表会が8月8、9の両日、神戸国際展示場で開かれ、208校が研究成果を発表した。文部科学大臣表彰には国分高校(鹿児島)が選ばれた。

牧瀬桃香さん(3年、左)と永田さん。牧瀬さんは「自分たちで研究するのは楽しい、牛糞も平気」と話す

 

コガネムシを現地で採取

今から7300年前、鹿児島県南方の鬼界カルデラで起きた火山爆発に伴い大規模な火砕流が発生した。幸屋火砕流と呼ばれ、九州南部の自然に壊滅的なダメージを与えたこの火砕流の影響を調べるため、同校サイエンス部昆虫班は飛翔能力の低い小型の糞虫エンマコガネ類の大隅諸島での分布を調べた。

まずは昨夏、班員9人で手分けをして大隅諸島に出向き、林の中に牛糞のトラップを仕掛けてエンマコガネ類を採集した。その結果、火砕流の直撃を受けた硫黄島と竹島ではどの種も採取できず、逆に火砕流を免れた地域がある屋久島で採取されたのは8種と最も多かった。

運動する能力を調査

また、採取したコガネムシがカーテンレールを歩く速度を計測したり、水面にコガネムシを置いて泳ぐ能力などを調べたりした。その結果、火砕流を免れ屋久島南部の川と山に囲まれたごく限られた地域にのみ生息する固有種ヤクシマエンマコガネは後翅が退化して飛べないだけでなく、歩く、泳ぐなどの移動能力も低いと分かった。さらにはDNA解析の結果、ヤクシマエンマコガネが広い範囲に生息する近縁の種と約150万年前に分岐したことも分かった。

生物の進化を追った点を評価

これらの研究結果から、もともと屋久島全域に生息していたヤクシマエンマコガネは幸屋火砕流によって生息域が狭められてしまい、その移動能力の低さにより、生息域はまだ回復していないと推定している。審査員からは「生物の進化という長大な時間の流れの中で、ミクロとマクロの視点で自然を扱う、チャレンジのある興味深い研究」だと評価された。

永田梨奈さん(3年)は「今後はヤクシマエンマの化石を発見してみたい」。屋久島南部以外の地域で生息していた痕跡を見つけて仮説の正しさを証明したいと考えている。