インターハイバスケットボール女子の3位表彰式の後、四日市商(三重)の井谷彩良(3年)は大勢の記者に囲まれ、何度も「すみません」と頭を下げた。その受け答えは非常にたどたどしく、「しゃべるのが苦手なんです」と自ら白状。チームメートの堀江ゆうみ(3年)にその様子を伝えると、「いつもそんな感じです」と教えてくれた。
四日市商のキャプテンは例年、上の代が引退した翌日に決定する。しかし、今の代はそれが遅れた。堀江は「自分たちの代にはキャプテンシーがある人がいなかったから」と推測している。
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「2年生の田中(万衣羽)はすごく負けず嫌いで、私たちも『行くよ!』って引っ張ってくれるようなタイプです。3年生は頼りなくていつも怒られてばかり。中でも井谷は一番頼りないです」
堀江の評価は厳しいが、だからといって井谷のことを認めていないわけではない。むしろ逆だという。
「チームのためになることを一番考えてくれて、キャプテンシーがないなりに声を出して、すごく成長しました。この子と同じチームでプレーできてよかった。この子がキャプテンでよかったなとこの大会で痛感しました」
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井谷とのやり取りの中で、仲間思いの一面を実感する言葉があった。「エントリー外の子が洗濯をやってくれたりして、自分たちが試合に集中しやすいように協力してもらったから、ここまで来られました」
プレーでもチームを引っ張った。準々決勝の東京成徳大学高(東京)戦は第4ピリオドまでリードされっぱなしの展開だったが、井谷のゴールアタックで逆転に成功し、勝利。準決勝の桜花学園(愛知)戦では第2ピリオドから一気に点差を離され61-94で敗れたが、最後まで攻めの姿勢を崩さず、チーム最多の15点を稼いだ。
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報道陣に何度も謝りながら、言葉がしどろもどろになりながらも、井谷はメダルを両の手で大切に抱え続けた。チームを創部初のベスト4入りに導いたキャプテンに与えられた、大きなプレゼント。「メダルをもらうのはバスケット人生で初めて。けっこう重いんですね」とうれしそうに笑った。(文・写真 青木美帆)