川越工業高校(埼玉)では毎年、電気科3年生が課題研究の一つとして本物さながらの「電車作り」に取り組む。今年も4月から、13人が「鉄道班」を結成してオリジナルの電車を製作中だ。(中田宗孝)

電気科鉄道班員たち。製作を進める自動化電車に適した駆動、給電方法を試行錯誤中だ(中田宗孝撮影)

部品も制御装置も生徒の手で

この取り組みを前任校から続けてきた先生(定年退職)が川越工業高校に転任した2009年から続いており、課題研究として毎年、違った種類の電車を製作している。電車作りの経験を生かし、卒業後は鉄道会社に就職する生徒も多い。

生徒は部品作りから、電車を動かす制御装置の開発、車両の設計、レールの組み上げまで、電車を一から作る。電車の上部に電力を送る架線を張る方式や、架線ではなくワイヤレス充電で動く方式など、毎年タイプの異なる電車が出来上がる。例年1両編成だが、3両編成の電車を完成させたこともある。

2017年度はワイヤレス式の電車を製作。校内にレールを敷いて試験走行を重ねた(写真は学校提供)

世界記録に認定されたことも

10月の文化祭では来場者を乗せる「川工電鉄」として、校内に延びた約60メートルの鉄道レールの上を走らせる。レールの幅を、多くの在来線が採用する1067ミリに設定するのもこだわりだ。生徒の発案で木造の駅舎や、手動の踏切が登場する年もあるという。「中学のころから『電車作り』に憧れていました。3年生になり、夢が1つかなった気分です」(鉄道班班長の森下滉大君・3年)

15年には電機メーカーと協力して、乾電池で動く電車作りに挑んだ。単1形乾電池「エボルタ」600本を動力源にした電車を製作。秋に秋田県の由利高原鉄道鳥海山ろく線を2時間47分かけて22.615㌔を走破。「乾電池で走る車両が線路上を走行した最長距離」として、ギネス世界記録に認定された。

2015年には乾電池で動く電車を実際の路線で走らせてギネス世界記録を達成した(写真は学校提供)

自動走行に挑戦

今年の鉄道班が目指すのは、無人でも電車を走らすことのできる「電車の自動走行化」だ(文化祭では非常要員が乗車予定)。スピードの加減速やブレーキも自動で行えるようになるという。過去の先輩も未経験の試みだ。「より高性能で安全な電車を作る」(関根雅仁君・3年)と、メンバーの士気は高い。

週1回の活動場所となる工作室では、制御部、車体(台車)部など4つの部署に分かれて作業に当たる。現担当の栗原健太先生からヒントをもらいながら、メンバー同士でアイデアを交わす。作業は膨大で、夏休み返上が予想されるが、メンバー全員、1年生のころから同じクラス。気心知れたチーム力で乗り切る。