145キロの速球を武器に甲子園を目指すエース上条将希

リード文を入力してください昨年の秋季県大会で準優勝を果たし33年ぶりに関東大会に出場した市川越(埼玉)野球部。今年5月の春季県大会はベスト4まで進んだ。私立勢が優勢な埼玉にあって、最も甲子園に近い公立校だ。地元で愛されるチームは今夏、25年ぶりとなる全国切符を狙う。(文・手束仁、写真・幡原裕治)

ごみ拾いで地域貢献

学校は住宅街の一角にあり、グラウンドに張られたネットの外には住宅が密集している。練習中にファウルボールがネットを越えると部員が謝りに行くが、「『いつも元気をもらっています。頑張ってください』と、逆に励まされています」と新井清司監督(58)はうれしそうに話す。
 チームは「地域に愛される野球部」をモットーに掲げる。毎週火曜日と木曜日は朝練習の代わりに、班ごとに交代で近隣のごみ拾いをする。兄2人も同部で主将を務めた丹羽功太主将(3年)=埼玉・名畑中出身=は「近所の人たちから声を掛けられることもあり、応援してもらっています」とほほ笑む。部員も、地域の人へのあいさつを欠かさない。

地元の声援「励みになる」

今年のチームは最速145㌔を投げる左腕・上條将希(3年)=同・大井西中出身=を中心とした、堅い守りが特徴。冨岡弥夏(3年)=同・和光二中出身=を中心とした打線も力強い。
 練習はほぼ毎日。朝と放課後の計約4時間を、守備を中心とした練習に費やす。シートノック前のボール回しでは、野手が意図的に球をこぼす場面があった。ミスが起きた状況をわざと作り、実戦で対処できるようにするためだ。
 学校で練習試合があると、近所の人が訪れる。何十年も見続けてくれる人もいる。上條は「見てくれる人が多いと、励みになります」と話す。父母会が毎年、顔写真入りの選手名鑑を作って地元のファンに配布しているのも面白い取り組みだ。
 地元の応援を背に、夏の県大会を戦う市川越。丹羽は「応援してくれる人の期待に応えたい」と力強く語った。

チームデータ1926年に川越商野球部として創部。89年夏に甲子園出場。2002年から現校名。部員92人(3年生24人、2年生25人、1年生31人、マネジャー12人)。昨夏の県大会ベスト8。