12月23日から29日にかけて、東京体育館(東京)で開催された全国高校バスケットボール選手権大会(ウインターカップ)男子。29日の決勝は明成(宮城)が全国高校総合体育大会(インターハイ)決勝で敗れた福岡大大濠(福岡)を79-72で下し、2年ぶり5回目の優勝を飾った。(文・青木美帆、写真・幡原裕治)

終盤に詰め寄られ 「周りのみんなを信じて」

インターハイでは1点差で敗れた相手に、一度もリードを譲らなかった。佐藤久夫コーチに「自分の責任を果たせ」と発破をかけられたエースの八村阿蓮(3年)が序盤から積極的に攻撃を仕掛け、シューターの田中裕也(2年)の3ポイントシュートも面白いように決まる。「前半はできすぎだった」と佐藤コーチ。第3ピリオドには22点ものリードを積み上げている。

終盤に勝負の重点を置いた福岡大大濠にその後猛攻を仕掛けられ、第4ピリオドが残り3分を切ると3点差にまで詰め寄られた。主将の相原アレクサンダー学(3年)は「少しあせりがあった」と振り返るが、「周りのみんなを信じて、自分も自信を持ってやろうと思った」とあくまで強い気持ちで戦ったことを強調。田中が速攻に走り、本間紗斗(3年)が攻撃時間終了間際のシュートを沈め、塚本舞生(3年)は試合終了のブザーが鳴り響く中でもゴールに向かって駆けた。

序盤から攻撃を仕掛けたエース・八村阿蓮(左)

苦しい時こそ大きな声「全員で信じる」

1点に泣いたインターハイを受けて、選手たちは自信を持つことを目標に掲げてきた。何度もミーティングを行い、練習中も苦しいときこそ大きな声を出して戦う雰囲気を作ることに注力。八村は「いくらファウルをされようが自分がやってやるという気持ち」を持ち、ガードの塚本と田中は相手チームの司令塔を徹底マークするために、ベンチでも宿舎でも密に会話を重ねてきた。

主将としては優しすぎることが課題だった相原も、「アレックス(相原)はアレックスらしく」という仲間たちの励ましを受け、徐々にキャプテンシーを発揮できるようになった。そんな選手たちの成長ぶりを見て、佐藤コーチは「自分たちで戦おうとしている姿勢を信じた」と、決勝戦後半も極力タイムアウトを取らなかったと話す。

「苦しいときも全員で信じて、自信をもって声を出せたのがよかった」と相原。前回大会1回戦負けのチームが王者に駆け上がれた、最大の要因だった。

主将の相原アレクサンダー学(左)
【チームデータ】
2000年創部。部員26人(3年生9人、2年生5人、1年生12人)。主な卒業生に伊藤駿(サンロッカーズ渋谷)、畠山俊樹(新潟アルビレックスBB)、安藤誓哉(アルバルク東京)など。卒業生である八村の兄・塁はアメリカ・ゴンザガ大2年に所属し、日本人初のNCAAトーナメント出場を果たす快挙を達成している。
仲間を信じて優勝