ドラフトでは投手として指名を受けたが、長打が武器の打撃も魅力

日大三(東京)野球部の桜井周斗(3年)は、中学までは無名だった。だが、貪欲な向上心で投手、野手の〝二刀流〟を磨きながら、さらに主将としてチームを引っ張り、今年、念願の甲子園出場を果たした。10月26日のプロ野球ドラフト会議では、横浜DeNAベイスターズから投手として5位指名を受けた。成長し続けた高校3年間を振り返ってもらった。(文・写真 小野哲史)

打って良し 投げて良し

高校入学前、「(日大三は)レベルが高い。このままではベンチ入りもできない」と不安になり、ひたすらバットを振って備えた。高校生活は野手として同学年の選手より順調なスタートを切ったが、1年秋に初出場した公式戦ではすぐに途中交代。力不足を痛感し「もっとやらないといけない」と、さらに猛練習を積んだ。

投手陣の故障が相次いだ2年の夏、肘を疲労骨折した中学2年以来となる投手に再転向。切れ味鋭く「消える」とも評されるスライダーを武器に、その年の秋季都大会決勝で清宮幸太郎(早稲田実3年)から5打席連続三振を奪い、その名を一気に広めた。「打たれて報道されるのは絶対に嫌だったから、最後まで気を抜けなかった。自分のボールが通用したので自信になりました」

絶不調「どん底」乗り越え

3年春には目標だった甲子園出場を果たした。初戦で履正社(大阪)に敗れたものの、8回を投げて13奪三振。打っても3番打者として2安打2打点と力強くチームを引っ張った。「試合前は緊張したけれど、いざ始まると楽しかった」と振り返る。

しかし、5月の関東大会で絶不調に陥った。「自分の投球ができませんでした。チームはベスト4まで行きましたが、(小倉全由)監督からは本気で叱られました。そのころがどん底でした」。エースであり、打撃ではクリーンアップ。主将としてもチームをまとめなくてはならず、無意識のうちにプレッシャーを抱えていたのかもしれない。

それでも徐々に復調し、秋、春といずれも決勝で敗れた早稲田実への雪辱を誓って今年の夏の都大会に臨んだが、志半ばで敗退し、高校での野球生活を終えた。

1軍で活躍したい

プロへの思いは春のセンバツのころから強くなった。「1軍で活躍することが目標」と意気込む。小倉監督は「真面目でしっかりしている。重荷を背負わせすぎたかもしれません。主将になって成長し、男としてこれから未知の世界に踏み出す。そう自分で決めたことはカッコイイ」と評価する。

ドラフト前に「投手なら相手チームの中心打者から三振を取れる選手になりたい」と語っていた。高校3年間で心技体の全てを磨いた。次なるステージでも進化をやめるつもりはない。

 

 

 

 

 

 

 

【さくらい・しゅうと】
1999年6月25日、埼玉県生まれ。所沢・東中卒。小学1年から所沢ニュータウンヤンキースで野球を始め、中学時代は新座シニアに所属。2017年春の全国選抜大会出場。9月のU18ワールドカップに日本代表として出場し銅メダル。178センチ、80キロ。左投左打。

Q&A 神社参拝が好き

─好きな食べ物は?

サツマイモなどイモ系です。

─試合前に緊張しないようにやっていることは?

バスの中で音楽を聴くのがルーティンの一つです。試合前はB'zの「LOVE PHAN TOM」を聴いて気分を高めています。

─好きな言葉、座右の銘は?

「無心」とグローブにも書いています。考えすぎるとよくないタイプだからです。

─オフの日は何をしている?

神社などにお参りするのが好きです。1人で行ったり、家族や友人と行ったりしています。