かつて全国の鉄道網を運営した国鉄(日本国有鉄道)は、赤字体質などが問題になり、1987年4月1日、JR東日本など旅客6社とJR貨物の計7社に分割・民営化された。それから30年、旅客会社のうち本州3社と九州は経営が順調で、国が保有する株式は全て売却され、完全民営化を果たした。一方、北海道、四国、貨物は苦しい経営が続き、明暗が著しい。
鉄道以外の事業にも進出
東日本、東海、西日本の本州3社は新幹線や都市部の通勤輸送が好調なことに加え、駅構内などの商業施設も成功し営業利益が向上、海外へのインフラ輸出にも乗り出す。九州は九州新幹線の開業を機に駅ビルなどの不動産開発を進めたことが奏功、本州以外で初めて完全民営化を実現した。
地方は路線維持が困難に
北海道は人口減少や高速道路の整備で利用客が落ち込み、全路線の半分に当たる10路線13区間(計約1200キロ)について「単独では維持が困難」としている。北海道新幹線も当面は赤字の見通しだ。四国も鉄道事業が厳しく、完全民営化までの道のりは遠い。
国鉄の分割・民営化に際して、政府はJRの負担を軽減するため、全国83線(計約3千キロ)の赤字ローカル線の廃止を決めた。廃止対象路線の多くは、自治体が出資する第三セクターや私鉄に引き継がれたが、大半の路線は沿線人口の減少などで利用者は先細りとなり、維持が困難な状況だ。
10年後にはリニア新幹線も
一方、新幹線は新函館北斗駅から鹿児島中央駅まで全長3300キロに及ぶ。10年後には東京と名古屋を約40分で走る時速500キロの「リニア中央新幹線」も走る。
大都市では次々に新線が開業し、新幹線はますます速く、快適に。だが、過疎化の進む地方では人々の足が奪われていく。公共交通の在り方が問われている。