天文学に関する研究は、世界中で盛んに行われているものの、まだ未知のことも多い分野である。宇宙研究を行うには、どのような進路に進むのがよいのか、どのような本や映画に影響を受けたのかを国立天文台・柏川伸成先生に聞いた。

話を聞いた国立天文台の柏川伸成先生。

――大学時代の専攻はなんですか。

銀河天文学と観測的宇宙論です。銀河天文学は、どのように銀河が生まれて今のような天の川銀河に育ってきたのかを考える学問です。観測的宇宙論は、宇宙がどのように膨張しているのか、どのくらいの速度で膨張しているのかを考える学問です。

――高校時代の履修はなんでしたか。

化学と物理です。大学では素粒子物理学か、天文学のどちらかを学びたいと思っていました。高1のころは、物理はあまり得意ではなかったです。

――得意ではなかった物理はどうやって乗り切りましたか。

僕は「あの大学で学びたい」という気持ちが強かったんですよ。明確に自分が将来これをやりたいというモチベーションがあったから、嫌なことも頑張れたと思います。

――特にやりたいことが決まっていない場合はどのように進路を決めるのがいいですか。

大学で何を学びたいということよりも、将来何をしたいかと考えるのがいいのでは、と思います。そのためには学校外での学びも大切です。例えば物理が得意でも、何に生かせばよいかは学校で教えてもらえません。本や映画を観れば「こんな世界があるんだ」と分かりますし、興味のある分野の人の話を聞きに行くことで、刺激を受けたり、これをやってみたい、という気持ちが湧きあがってくるかもしれない。だから、受験勉強も大切だけれど、高校生のうちにできるだけ世界を広げることが大切だと思います。

――文理選択や進路選択で影響を受けた作品や、宇宙に興味のある高校生に勧めたい作品を教えてください。

映画

・『2001年宇宙の旅』(1968年)

古典的な映画です。人類の歴史から始まって宇宙開発に乗り出していく人類を追った哲学的な映画です。宇宙を知りたいという気持ちが湧きあがると思います。

・『インターステラー』(2014年)

宇宙系の映画の中でも特にリアリティがあります。宇宙に関心を持ってくれる高校生が増えるのではないかと感じました。

・『オデッセイ』(2015年)

系外惑星や宇宙生命にかかわる問題で、もしも映画のような問題が起こったら、映画の世界が現実になるのではないかと感じました。

・『物理学はいかにつくられたか』アインシュタイン 岩波新書

天文学ではなく、物理学の本ですが、ばりばり理系の人におすすめの本です。物理がもっと好きになる本だと思います。

・『宇宙創成はじめの3分間』ワインバーグ ちくま学芸文書

宇宙や銀河の始まりに興味がある人におすすめです。