抜きん出た負けず嫌いさと得点への貪欲さを持つ東野(右)

部員の最高身長は187センチ、体育館をフルに使えるのは週2回……。厚木東(神奈川)男子バスケットボール部は、ハンディを抱えながら今季は県新人戦優勝、関東大会3位という成績を残している。練習時間の短さを逆手に取り、本気のプレーを追求する。(文・写真 青木美帆)

メニューは時間で区切る

全力でコートを駆け抜けたら、間違いなく壁に激突する。コートのまわりに余白が全くない狭い体育館が本拠地だ。完全下校は午後7時。4つの部が体育館を共用するため、1時間弱しか利用できない日が週に2回。しかし、県内屈指の強豪として名をはせている。

短い練習時間をフル活用するため、練習メニューの切り替えや集合などは素早く行う。メニューも、回数ではなく時間で区切られており、その中で実戦で通用する質の高いプレーを追求している。

満足に練習できないからこそ、部員たちはバスケに飢えている。「練習後、全員が『もっとバスケをしたい』と思いながら帰る。その欲があるから、次の日もい い練習ができる」とエースの東野恒紀(3年)。主将の佐野龍之介(3年)も「このチームでバスケがしたくて1〜2時間かけて通学する部員も多い。これは他 のチームと大きく違うところだと思う」と続けた。

半年かけて足運びを習得

他の強豪校と比べて平均身長が低い厚木東の生命線は、ディフェンスとリバウンド。ディフェンスフットワークに1時間近く取り組む日も。一般的なそれとは異なる動きをマスターするには半年ほどかかるが、格段に足が動きやすくなるという。

リバウンドでは、相手の動きを封じる「スクリーンアウト」を重視。「練習で本気でやり合っているから、大きい相手からもボールを奪える」という東野の言葉通り、全力で相手を抑え、全力でボールを追いかける部員たちの姿が印象的だった。

信頼関係を重視(永田雅嗣郎監督)

 

 

(取材に訪れた)今日は集中力が切れていたので、全体練習を早めに切り上げました。この時も、練習後に「オフを作る」と言った時も選手たちは不満そうでした。みんな練習が好きだから、不思議と「早く帰れる」とか「遊びに行ける」とは思わないんですよね。 大切にしているのは、選手との信頼関係です。高校までは緻密な戦術がなくても、気持ちを乗せてあげれば、ある程度戦える。そのためにも「こうすれば絶対勝てる」と信じてもらえる関係が必須です。選手起用に関しても、不満を生まないために選手に相談しますし、メンバーの選考理由も全員にきちんと話すようにしています。

 

 

フットワーク
フットワークは月に1度、専門コーチの指導を受けながら磨かれる。「慣れるのに大変だったけど、この動きがなければ守れません」(佐野)

 


リバウンド練習
3人組で行う練習。1人がボールを大きくバウンドさせ、2人はスクリーンアウトで相手を押さえ、空中のできるだけ高い位置でボールを奪う

 

5対5
人数が多いため、1往復半でメンバーを交替しながら行う。選手たちは自分たちのプレーが終わるたびに、仲間と動きを確認し反省をする

 

 

 
【TEAM DATA】
1981年創部。部員31人(3年生16人、2年生15人、1年生は入部前)。2008年の永田監督就任以降、全国大会に3度出場。最高成績は13年全国高校総体(インターハイ)ベスト16。目標は練習試合を含めて県内無敗、全国大会ベスト8以上。