全国高校総体(インターハイ)陸上の男子5000メートル競歩決勝が7月31日、岡山県のシティライトスタジアムで行われ、山本真二郎(富山・富山商3年)が20分14秒63の大会新記録で優勝した。(文・中尾義理、写真・幡原裕治)
残り600メートル、兄弟勝負に
7月のU20世界選手権代表の川野将虎(静岡・御殿場南3年)と、山本の双子の兄、龍太郎(富山・富山商3年)を中心にハイレベルな選手がそろう今季の高校競歩。予選から8選手が大会新記録をマークするなどヒートアップした。
迎えた決勝。予想通り、川野が先頭を引っ張る展開。先頭集団は3000メートルで7人、4000メートルで6人と徐々に集団が絞られていった。
レースが大きく動いたのは残り600メートル。山本龍が一気にスパート。山本真が追った。急激なペースアップは歩型違反を取られるリスクが高まるが、山本龍は「絶対に1番でゴールしたかった」、山本真は「先生から『気持ちの勝負だ』と言われていたので、苦しくても力を抜いたら負ける」とそれぞれリスクを覚悟したスパートだった。
山本龍、優勝目前で「失格」
そのまま双子でワンツーフィニッシュかと思われたが、その快挙の寸前で悲劇的な結末が待っていた。
トップの山本龍がフィニッシュまであと1メートルというところで、失格を告げられたのだ。呆然とする山本龍の脇を、2位を歩いていた山本真がゴール。すぐには状況を理解できなかったのか、胸の前で右手を小さく握っただけだった。
山本真は「必ずチャンスがあると、あきらめずに歩きました。U20世界選手権には川野と龍太郎が出て、悔しい思いがありました。インターハイこそはと思っていたので、結果が出てよかったです」。山本龍の心境を思いやり、喜び爆発とはいかなかったが、山本真の表情には確かな達成感が広がっていた。
予選で樹立された大会記録は、決勝6位までがさらに更新。まさに大会史上最高レベルの好勝負だった。