陸上競技の男女棒高跳びで、6月の南関東大会をそれぞれ好記録で制した吉澤珠理と村社亮太(ともに千葉・日体大柏3年)。ともに2度目のインターハイでは、「優勝して『日体大柏』の部旗を掲げる」と意欲を見せる。(文・写真 小野哲史)

課題の助走、克服に注力

2年前の春、「4メートルを跳ぶこととインターハイの優勝」を目標に高校生活をスタートさせた吉澤。しかし、「1年秋に初めての全国大会だったU18大会で、緊張して力を発揮できなかった」と話す。

棒高跳の魅力を「すごく高く跳んで華やか。成功か失敗かがわかりやすく、跳べた時に周りが一緒に喜んでくれる所」と話す吉澤

「それからはそういう状況を想定して練習するようになった」吉澤が、大きく飛躍したのは高校2年。初のインターハイは最初の高さの3メートル40で2回失敗し、早くも追い込まれたものの、決勝で当時の自己記録タイとなる3メートル80を跳び、堂々の6位入賞を果たした。 

棒高跳びは、踏み切った後に体を倒立させて、ポールとともに全身が垂直になるのが理想とされる。「中学時代にクラブで癖になるぐらい教わった」という吉澤はその空中動作を得意としている一方、ずっと助走が課題だった。「冬季もひざ下が前に出ないようにして走ることと、踏み切り数歩前に減速しないようにすることを意識しました」

そうした努力の成果は、今季のインターハイに向けた戦いで発揮されていく。5月の県大会では自己記録を10センチ更新する大会新の3メートル90。南関東大会ではそれを3メートル91まで伸ばし、またしても大会新記録を打ち立てた。吉澤は記録面だけでなく、「南関東では3メートル80まではすべて1回でクリアできた」と、跳躍に安定感が出てきたことに自身の成長を感じている。

5戦で5メートル超えの好記録

南関東大会で今季高校最高の5メートル21をマークし、一躍、インターハイの優勝候補に挙がってきた村社は、これまで苦い経験を重ねてきた。「緊張で頭が真っ白になった」と振り返る高校1年の県大会は、最初の3メートル80を一度も跳べずに「記録なし」。2年目は県大会前から腰痛を抱え、南関東大会は4メートル70の4位で何とか突破したものの、「テーピングを巻いて、痛み止めを飲んで」という状態だった。

中学まで体操をやっていた経験を生かした「空中動作と、どんな状況でもポールを思い切って突っ込める所が自分の武器」という村社

初のインターハイは、「自分がこの舞台にいていいのか」と思ってしまい、予選落ちに終わったが、大会後に改めて振り返り、「関東を勝ち抜いて全国に行けたのだから、自信を持っていこう」と前向きな思考に変えた。冬季は「ポールを持った腕の出し方を改善し、体が細かったのでウエイトトレーニングをやったり、走力を強化したりした」という。筋力や技術面の向上により、村社はより高い高さを跳ぶための長くて硬いポールを扱えるようになった。

入学当初、親から「5メートルを跳べないと全国で戦えないぞ」と言われた村社は、今年に入ると2月の室内大会で5メートル01を跳んだのを皮切りに、5戦で5メートル超えを達成。近いレベルで切磋琢磨(せっさたくま)してきたチームメイトの宮嵜裕大(3年)に刺激を受けながら着実に成長を遂げ、南関東大会の大ジャンプにつなげた。

優勝し部旗を掲げたい

競技を続けていけば、うまくいかないことや試合で結果が出ないことも多い。そういう時に吉澤は「同じ棒高跳びの村社や宮嵜が良い記録を出し続けてくれているし、陸上部の他のメンバーも頑張っている姿を見て、『自分も頑張らなきゃ』と励まされる」、村社は「落ち込むこともあるけれど、できるだけ引きずらないようにして、次の練習から反省点を生かすように心掛けている」と話す。

互いに刺激し合って競技力を高めてきた吉澤と村社。ともに2度目のインターハイでは、「優勝して部旗を掲げたい」と意気込む

棒高跳びチームは日頃から吉澤、村社、宮嵜ら3年生が中心になって、意見交換をしつつ練習を進めている。練習がない日は、吉澤は「1人で買い物やカフェに行ったりして」過ごし、村社は「好きな音楽を聴いたり、ゲームをしたり」と、それぞれに気分転換の時間も大切にする。オンとオフの切り替えは、競技中のここ一番における高いパフォーマンスの発揮に欠かせない。

インターハイの目標は、「強い選手がたくさんいますが、優勝したい。勝つためには4メートル10は跳んでいきたい」(吉澤)、「大会記録(5メートル43)を跳んで、宮嵜とワン・ツーをとりたい」(村社)と、ともに頂点を見据える。そして、2人は「柏日体から校名が変わった2016年以降、チームからインターハイ優勝者が出ていません。自分たちが優勝して、『日体大柏』の部旗を掲げたいです」と力強く口をそろえた。

<プロフィール>

よしざわ・しゅり 2005年7月26日、埼玉県生まれ。原市中卒。小学4年で埼玉県のジュニアアスリート発掘プログラム「プラチナキッズ」に選ばれて陸上に出合い、中学1年から地元のクラブで棒高跳びを始めた。2022年インターハイ6位、2023年U20日本選手権3位。自己記録は3メートル91。166センチ。

むらこそ・りょうた 2005年6月17日、埼玉県生まれ。長野中卒。地元クラブで体操競技に取り組む傍ら、小学4年で「プラチナキッズ」に選ばれて陸上を始め、中学1年から地元のクラブで棒高跳びに取り組む。2022年インターハイ出場、2023年U20日本選手権5位。自己記録は5メートル21。174センチ、66キロ。