凝固剤を移し替える大野桃香さん(左)と原莉奈さん

熊本地震を受けて、徳島・阿波高校の家庭クラブが「災害時に役立てよう」とオリジナルの携帯用簡易トイレ「携帯MYトイレ」を開発、600セットを製作した。5月のPTA総会で保護者に配布し、好評を博した。秋の文化祭で地域住民にも配布する予定だ。
(文・写真 藤川満)

きっかけは熊本地震

家庭クラブは、同校の1年生200人全員が所属する。家庭科の授業で学んだことを生かして、東日本大震災の被災地支援活動や防災啓発活動に取り組んできた。

今回の開発のきっかけとなったのは、熊本地震。クラブで避難所生活や震災関連死に関して学習した生徒たちは「災害時の生活で何が必要か」と考えた。災害で水が断たれると、トイレの水も不足する。排せつを我慢しようと水分を控えた結果、脱水症状やエコノミークラス症候群を引き起こしやすくなると知り、「水を使わないトイレを開発する」ことを思いついた。

左から凝固剤とビニール袋とそれを収納するパッケージ

地元企業が協力

「携帯MYトイレ」は、凝固剤と固めた尿を入れる紺色のビニール袋がセットになっている。おむつなどで使用する凝固剤「高分子吸収体」の粉末で尿を固めて、燃えるゴミとして捨てることができる。凝固剤は高価だが、学校の近くで操業する紙おむつメーカーに、指導を担当する藤井徳子先生が掛け合ったところ、「クラブ活動に役立ててほしい」と30キロを寄付してもらったことで実現した。

完成までには試行錯誤があった。生徒たちは、約1カ月かけ、尿を固めるのに最適な凝固剤の量を実験で検証した。平均の尿の量をやや上回る0.3リットルを固めるための凝固剤を10グラムに設定した。副代表の原莉奈さん(1年)は「凝固剤の量を変えて、水分を染みこませる実験は大変でしたが楽しかった」と振り返る。

文化祭で住民に配布へ

9月の文化祭で配布する予定。地域の住民からは「ぜひ商品化して売り出してほしい」という声も上がっている。 代表の大野桃香さん(1年)は「これからは実際の災害時にすぐにこの携帯用簡易トイレを手渡せるようにマニュアル作りにも取り組みたい」と意気込んでいる。