ダイナミックなプレーが持ち味の大倉は17得点を挙げたが、本領発揮とはいかなかった(青木美帆撮影)

 創部2年で全国高校バスケットボール選抜優勝大会(ウインターカップ)出場を果たした北陸学院(石川)。石川出身者のみで構成された若いチームは今大会を経験し、大きな目標に向けての一歩を踏み出した。(文・写真 青木美帆)
 

■力の2割も出せず
 
 北陸学院の記念すべき全国大会初戦の相手は、山形南(山形)だった。浜屋史篤コーチ(26)が「必死で頑張っていたけれど、持っている力の2割も発揮できなかった」と振り返るように、第1ピリオド以降はまったく歯が立たなかった。
 
 全国でも指折りのディフェンス力を持つ山形南の前に、司令塔の酒井達晶主将(2年)=石川・布水中出身=はパスの出しどころを見失い、ミスを繰り返す。ポイントゲッターの大倉龍之介(2年)=同=、古村健一(2年)=石川・浅野川中出身=は動きの中でシュートを打てず、なかなか決められない。外れたシュートを山形南にことごとく拾われ、次々と速攻につなげられた。
 
 最終スコアは51-75。「こんなにシュートが入らない試合は初めて」と浜屋コーチも呆然。本来なら80点~90点取って勝つチームが、たった51点しか取れなかった。あっけなく初戦敗退だ。

 
主将の酒井(写真右)ら主力が最高学年となる2015年の躍進に期待したい(青木美帆撮影)

■石川をバスケ王国に
 
 2005年に女子校から共学化し、13年に男子バスケットボール部が創部された。全国中学バスケットボール大会でベスト4に入った布水中(石川)のメンバーを中心に、県内出身者で構成されている。
 
 中学バスケの名門である布水中は、優秀な選手を県外の強豪私学に送り出すことも多い。酒井は落ち着いたゲームメークがひときわ目立つ存在だった。エースの大倉も恵まれた体格とクイックネスを生かした全国屈指のポイントゲッターで、U-16日本代表候補にも選出された逸材だった。しかし彼らは県外に出ずに地元の新興チームに進学することを選んだ。
 
 「石川県を日本一にしたかったからです」(酒井)
 
 「県外の学校に行って自分だけが成長することよりも、自分が石川を強くするという気持ちのほうが強かったからです」(大倉)
 
 大倉や酒井に呼応するように布水中の仲間や県内の有名選手が集まり、今年の春季大会で初の県制覇を達成。そして9月の選抜予選でインターハイベスト16の金沢工を83-76で破り、初の全国大会出場を決めた。
 
 創部2年目の伝統なきチームではあるが、試合後の酒井と大倉の言葉からは、すでに県を代表する者としてのプライドがにじみ出ていた。
 
 「下級生だから負けて当たり前とかじゃないです。(全国に)出たからいいじゃなくて、出てこそ結果を残さないといけなかったです」(酒井)
 
 「自分たちが石川を強くしていくためには、自分たちが先頭に立ってしっかりしていかなきゃいけない。なのにこういう結果を残してしまったことには悔いが残ります」(大倉)
 
 チームが目指すのは創部3年での全国制覇。生まれ育った石川を「バスケ王国」に――彼らの大きな夢に、最初の楔が刻まれた。