東京大学は現在の高校3年生が受ける2016年度入試から導入する推薦入試の詳細を固め、3月31日に募集要項の予告版を公表した。出願から合格発表までの日程が決まり、志願者が記入する志願理由書や高校が作成する推薦書の見本も初めて明らかにした。発表内容を踏まえ、各高校では推薦する生徒の人選が進むことになりそうだ。
(西健太郎)

11月受け付け、2月合格発表

 正式な募集要項の配布は7月からだが、予告版は正式の要項とほぼ同じという。相原博昭副学長は「初めての推薦入試を成功させるため、できるだけ早く高校と高校生に知らせ、準備してもらおうと考えた」と語る。

 各高校が推薦できるのは男女各1人。11月2日から6日まで出願を受け付け、提出された資料や書類を基に第一次選考を実施。通過者に12月19・20日に面接などがある。1月の大学入試センター試験の結果もふまえ、2月10日に合格者を発表する。「センター試験の結果もしっかり見たい」(福田裕穂前副学長)という理由で、多くの国立大の推薦入試より合格発表が遅くなった。

学部ごとに独自の提出物

 推薦要件や必要書類は、各学部が定める。文学部は、高校在学中にまとめた論文などの提出を求めるといった具合だ。志願理由書や推薦書の内容も学部ごとに異なる。例えば、法学部の志願理由書は「現代社会において重要と考える問題」を書かせたうえで、その問題に「あなたが今後どのように関わっていくのか」などを論じさせる。

 東大では、1、2年生全員が教養学部に所属し、3年生から専門学部に分かれる。通常は学部を2年生の半ばに決定するが、推薦入学者は入学時点で進学する学部が決まる。募集要項によると、「推薦入学者向けに専門科目の早期学習や個別指導を行う」(理学部)といった特別なプログラムを設けている学部もある。推薦入学した1・2年生への教育内容が明確でない学部もあるが、「夏にはより詳しい内容を明らかにする」(入試課)という。

3月末に公表された学部ごとの志願理由書や推薦書の見本

高校の先生の反応「変わった」

 東大は入試説明会などで推薦入試を広報してきた。福田前副学長によると高校の先生の反応は、「当初は否定的な声が多かったが、『推薦すべき生徒がいれば…』と変わってきた」という。相原副学長は「日本の高校の力を信用し、推薦入試を導入した。入学した学生、送り出した高校、大学の三者にとってよいものにしたい」と話す。

 予告版の要項や志願書などの見本は、東大のサイトから閲覧できる。