日本中に一大ブームを巻き起こしたNHK 連続テレビ小説「あまちゃん」。この夏、ロケ地となった岩手県久慈市の小袖海岸では、「高校生海女クラブ」が大活躍。ドラマのヒロインにも負けない笑顔と元気で、14 人の「高校生あまちゃん」が全国から訪れた観光客をもてなした。 (文・写真 阿部理)
「高校生海女クラブ」は2005 年に、久慈市観光物産協会が地元の観光PRを目的に結成した。「あまちゃん」の放送開始以来、久慈市小袖海岸の「海女センター」を訪れる観光客数は激増。昨年8月が約1900 人だったのに対し、今年の8月は約5万3千人。「高校生あまちゃん」も大忙しだった。
取材に訪れた9 月14 日は、岩手・久慈東高校の「あまちゃん」3人組が観光客をもてなした。海に潜ってウニを採り、販売所で海産物などを売る。中野百も瑛えさん(2年)と中川沙耶さん(2年)は「同じアルバイトなら、地域の役に立つことを」と昨年から参加。小田彩さんは、クラブ唯一の1年生。「不安もあったけど、海が好きだから」と参加した頑張り屋。この夏の素潜り実演は20 日を超えた。
素潜り実演は1日3回。1回につき約30 分間、ベテラン海女を含めた5人が海に潜ってウニを採る。ウニを手に海面から顔を出すたび、観光客から拍手が湧く。「手を高く上げ、精いっぱいアピールするようにしています」(小田さん)
潮の流れが速く、水深は約6㍍と深い。一度潜るだけで体力をかなり消耗する。海から上がるころには、階段を上れないほど足がフラフラだ。
海の中では思わぬハプニングも起こる。岩に袖が引っ掛かり、海藻が足に巻き付くこともしばしば。「岩を蹴って海面に上がろうとした時、ウニを蹴って足にとげが刺さったことも」(中野さん)。まさに「じぇじぇじぇ」な体験の連続だ。
素潜りの実演後は、観光客との写真撮影にも気さくに応じる。アイドルのような人気だ。中川さんは「もともと人と接することが好きなので、プリクラ感覚で楽しんでいます」と慣れた様子。遠くから訪れてくれた観光客のことを思い、できるだけもてなしたいと考えている。
ベテラン海女から素潜りを教わったが、注意されるのは素潜りのやり方より、あいさつや礼儀に関することが多かった。中川さんは「いい大人になるため、これからも見習っていきたい」と話す。
この夏、3 人は多くの観光客と接し、それぞれ「社交的になった」「成長できた」と感じている。地元の魅力や今後についても考えるようになった。自分のため、地域のため、来年も参加する予定だ。
(高校生新聞 2013年10月号から)