堀田みず希さん(富山・高岡商業高校1年)は、空手、レスリング、ボクシング、柔道、相撲で活躍しているアスリートだ。5競技全てで世代トップクラスの実力を持ち、小学生のころから注目を集めてきた。「五刀流」という唯一無二のチャレンジングな競技生活を送る彼女に、普段の練習や強さの源、思い描く夢について語ってもらった。(文・中田宗孝、写真・本人提供)

2競技でインターハイ出場

打撃競技の空手、ボクシング、組技競技のレスリング、柔道、相撲の5競技に打ち込み、全ての競技で小中の全国大会出場という輝かしい実績を持つ。

5刀流アスリートの堀田さん。フルコンタクト空手はじめ5つの競技で数多くのトロフィーやメダル、賞状を獲得

8月のインターハイでは、2競技に出場。レスリング5位(62キロ級)、公開競技のボクシング3位(ライト級)とどちらも上位入賞を果たし、「一定の成果は出た」と振り返る。ボクシング、レスリングともに3年生を相手に僅差で敗退し課題も見つかったが、「高1から2競技で全国を経験できてよかった」と収穫も感じている。さらに今夏は空手と相撲の大会にも出場するなど健闘した。

ボクシングの練習風景。中学では3年連続で全国優勝を成し遂げた

五刀流は「私にとって当たり前」

空手道場主である母親の門下生だ。2歳半から空手を始めた。幼稚園年長でレスリング、小1からボクシングと柔道、小3からは相撲が加わる。幼いころから多競技に取り組み、「私にとってそれが当たり前ですし、生活の一部なんです」と話す。

中学のときコロナ禍で思いどおりの練習や試合ができなかったレスリングを高校の部活動として選んだ

現在は、1日に2つの競技の練習に励む。平日は高校のレスリング部で汗を流した後、学校外の武道館などでそれぞれの競技のコーチに指導を受けながら、他の4競技の練習を日替わりで行う。各競技1日2、3時間の練習では量より質を意識する。「複数の競技の練習をするので。あわせて、食事やマッサージ、十分な睡眠といった体のメンテナンスも大事にしています」

「5競技分の悔しさが自信になる」

5つの競技が好影響を与え合う、確かな感覚を得ている。「空手の練習で磨く、手足のスピード感のある動きは、接近戦で打撃技を繰り出すボクシングに生きる。レスリングや相撲での重心を低くして最大出力を出す動きは、柔道にも通じます」

9月に出場した富山県の秋季柔道選手権大会では、個人戦57キロ級で優勝を飾った

多競技アスリートであることはメンタル面にもプラスに働く。「幼いころから5競技を続ける中で、5競技分の苦しい練習をこなし、悔しさを感じる試合があります。他の選手との違いがあるなら、私はその『経験値』だと思う。自分の自信にもつながっている」。5競技で培われた精神的なタフさが、「アスリートとしての私の強み」だと言う。

「ロス五輪に絶対出たい」複数種目で出場目指す

「(放課後や休日に)友達と遊ぶ時間は全然ありません。それは自分で決めた道なので」と実直に武道を歩む。練習に次ぐ練習のストイックな毎日を送るのは、「オリンピックで金メダル」の夢を叶えるためだ。

夢や目標を語るとき、「感謝」の言葉も口にする。「両親や各競技の指導者、地域の方々。多くのサポートに支えられて今の生活が送れているんです。私は『結果』でみなさんに恩返しがしたい」

 
高校生からは女子相撲一般の部での出場となり、大学生や大人の女性力士との取組が増える

地元・富山県高岡市への愛着も強い。県内外のスポーツ強豪校ではなく、地元の高校に進学。大事な試合前には地域の神社に参拝する。「学校からも見える立山連峰の景色はめっちゃキレイ」と笑う。心が整う高岡市でのアスリート生活も、彼女の力の源なのだ。

パリ五輪をテレビ観戦し、どんな環境下でも集中力を切らさず、最大限のパフォーマンスを発揮する日本代表選手の姿を目に焼き付けた。「私と年齢も近く、同じ富山県出身の中山楓奈選手(女子スケートボード日本代表)からはとても刺激を受けました。次のロス五輪には絶対に出たい気持ちがより強くなった」。複数種目でのオリンピック出場も大きな夢として描く。「基礎体力と技術面の向上」が目下の目標だ。

1週間の練習スケジュール

【月】レスリング部 空手

【火】レスリング部 ボクシング

【水】部休 柔道 

【木】レスリング部 相撲/空手

【金】レスリング部 空手/柔道

【土・日】各競技の大会出場 県内外での強化練習に参加 休養(オフ)

1日のスケジュール

7時      起床・勉強

8時~16時  学校・授業

16時~18時 レスリング部(部活動)での練習・帰宅

19時~22時 空手/ボクシング/柔道/相撲の練習

23時ごろ   勉強・就寝

ほりた・みずき 2008年生まれ。21~23年「全日本UJボクシング王座決定戦」中学女子の部全国3連覇。24年6月「グランドチャンピオン決定戦 全日本少年少女空手道選手権」高校女子・無差別級の部全国3位。明治安田生命の「地元アスリート応援プログラム」の一人に選出。3人きょうだいの長女。