日本のスポーツ界に、新たな高校生スターが誕生した。体操の世界選手権(10 月、ベルギー)の床運動で、白井健三(神奈川・岸根2年)=神奈川・寺尾中出身=がプレッシャーに負けないタフな精神力と、空中での「ひねり」を武器に、金メダルを獲得した。(斉藤健仁)

ロンドン五輪の金メダリスト内村航平に「ひねりすぎて気持ち悪い」と言われるほど、床運動で見せるひねりがすごい。「ひねり王子」と報道するメディアもあるが「ひねり王子ではなく、英語でミスターツイストと呼ばれたい」と語る顔には、まだあどけなさが残る。

父が設立したクラブで幼少から体操に親しみ、トランポリンでひねりの感覚を身に付けた。世界選手権の跳馬は15.133点で4位入賞、床運動ではF難度の新技「後方伸身宙返り4回ひねり」を成功させ、16.000点で日本人として史上最年少で金メダルを獲得した。「(日本代表の)最年少として、思い切って演技しようと最初から決めていたので、目標が達成できてうれしかった」

後日、この新技は国際体操連盟から「シライ」と命名された。

ここまで成長できたのは「昨年の全日本選手権(の床運動)での失敗が大きかった」と話す。「予選は1位だったのですが、決勝で手を突いて5位になってしまった。今後、そんな思いをしたくない」

 

悔しさをバネに、今年6月の全日本選手権・床運動で初優勝し、世界への切符を手に入れた。「全日本選手権に勝ちたいという思いで集中して練習してきました。それがうまくいきました」

「いくら失敗しても『次にも大会がある』と思えば、あまり緊張しなくなりました」と、常に前向きな発想で試合に臨んでいる。世界選手権では「周りをビックリさせてやろうという気持ちもあった」と、演技を楽しむ余裕も生まれていた。

世界選手権に出場したため、修学旅行には行けなかった。学校で一番楽しい時間は「体操部のチームメートと昼ご飯を食べる時」。昼休みは毎日、体育館でワイワイ言いながら過ごしている。部員の一人は「(白井は)金メダルを取っても、いつもと同じように接してくれるので安心した」と話す。

今年の全国高校総体(インターハイ)は、床運動で2連覇を達成したが、団体は県予選で敗退した。「高校では部活として活動しているので、すごく悔しかった。来年は(インターハイに出て)最終班(上位6チーム)に残りたい」と早くも意気込んでいる。

色紙に「リオ(デジャネイロ五輪)は挑戦、東京(五輪)はエース」と丁寧に書いた。「(五輪出場は)夢です。出場して活躍したい」と先を見据えつつ、「一年一年を大切にしていきたい」と、じっくり歩みを進めるつもりだ。

ライバルとして名前を挙げたのは、日本代表の先輩である内村と加藤凌平。「床と跳馬以外の4種目も強くなって、2人が現役中には(個人総合で)勝ちたい!」と次世代エースとして名乗りを上げた。

しらい・けんぞう 1996 年8 月24 日、神奈川県生まれ。2人の兄の影響で3歳から体操を始める。2011年、中学3年時に日本選手権の床運動で2位入賞。昨年はインターハイとアジア体操選手権の床運動で優勝。161㌢、50㌔。