4月、沖縄県西表島で採取した土壌断面の長さを測定した(写真提供・科学技術高校)

西表島で現地調査

東京・科学技術高校には、ロボットやクラゲなどをテーマに、生徒有志が研究活動を行う4つの「スーパープロジェクト」がある。その中の1つ、「イリオモテプロジェクト」のメンバー13人は、独特な生態系が見られる沖縄県西表島のマングローブ林の謎を解明しようと「土壌」「葉」「散布体(ヒルギ科植物の芽生え)の繊維」「散布体の抗菌作用」の4班に分かれて研究している。

 メンバーは年に1回、西表島に足を運ぶ。阿部隼人君(3年)は「干潟に樹木がひしめく様子を初めて見た時は『自分の常識が通じない生態系』と衝撃を受けました」と振り返る。現地では、大学教授らの指導を受けながら、土などを採取し分析する。「西表で暮らす人ならではの直感や、自然に対する考え方もすごく勉強になります」(阿部君)

サンプルを300回測定

採取したサンプルは学校に持ち帰り、専用の装置で分析する。1つのサンプルを300回測定することも。下田凜太郎君(2年)は「実験は単純作業の繰り返しだけど、毎日少しずつ変化があるから楽しい」と前向きだ。今年は、先行研究を調べることにも力を注ぎ、辞書を片手に英語の文献にも挑んだ。

 9月、メンバーの4人が第9回高校生理科研究発表会(千葉)で研究成果を披露し、千葉大学長賞に輝いた。研究では「マングローブが植生する干潟の土壌は、植生しない土壌よりも有機物が多い」と推定できる根拠を明らかにした。研究指導にあたる七森敦行先生は「先行研究を丁寧に調べ、この研究の位置づけを明確にした点が評価されたのでは」と受賞の理由を話した。

(堤紘子)