「魚部」。北九州高校に異色の部活が誕生して15 年。水の生き物に目を向けた地道なフィールドワークと地域貢献が先輩から後輩へと受け継がれている。 (文・写真 南隆洋)
1998年、当時部員ゼロだった理科部に、部活に入っていない「帰宅部」の生徒10人が集められた。現在まで顧問を務める井上大輔先生の指導で文化祭の展示を企画。地元の紫川に「どんな魚が泳いでいるのか?」。川に入り調べ、展示したところ大好評。気を良くした生徒たちは、週末ごとに川や沼へ飛び出すようになった。
季節を問わず、フィールドワークは年間約50日。これまで80水系の川350地点、ため池450カ所に入った。
「見て!」「これ何?」
絶滅危惧種のイシドジョウが、定説と異なり冬も川床で生活していることを発見し、繁殖にも成功。県内での生息が確認されていなかったクボハゼを北九州市の干潟で発見し、改修工事が生息環境に配慮されたものに変わった。希少なゲンゴロウやヌマエビも確認した。
こうした成果を「どじょうのすべて」「面白いぞ!福岡の水生昆虫」「北九州の干潟」などのタイトルで公開展示。さらに、大学や博物館の研究者の協力を得て、『福岡県の水生昆虫図鑑』『北九州の干潟BOOK』『紫川大図鑑』と図書も刊行した。
子どもから大人まで集めて川や干潟の観察会を開き、小学校でのゲストティーチャーも引き受ける。校内ビオトープで絶滅危惧種デンジソウの保護を続ける一方で、北九州水環境館では約60種を常設展示。学校近くのJR駅にある水槽の魚の世話も受け持っている。
井上教諭の「世の中に存在していないものをやろう」との呼び掛けに、夢中になって取り組む部員たち。5月14日から、北九州空港で、「北九州の貴重な自然~紫川と響灘ビオトープ」の展示に取り組む。
部員は8人。部長の石原好恭君(3年)は「見たこともない生き物と出会ったときは感激。自分たちが知ったことを人に伝えることで、コミュニケーションの力も付いてきたように感じる」と話す。中学時代から魚部の催しに参加し、あこがれて入部したという三谷裕矢 君(1年)は「先輩みたいにいろいろな生き物を発見したい」と意気込んでいた。