廃炉や被災者への賠償など東京電力福島第1原発の事故対応費用が、これまで想定されていた総額11兆円から21兆5千億円とほぼ倍増することが経済産業省の試算で明らかになった。この巨額の費用は誰が負担するのだろうか。

Q  21.5兆円の中身は?

試算によると、「賠償」は想定の5兆4千億円から7兆9千億円、「廃炉」は2兆円から8兆円、汚染された土をはぐ「除染」は2兆5千億円から4兆円、汚染土などを保管する「中間貯蔵」は1兆1千億円から1兆6千億円に増えた。費用のうち、東電は計15兆9千億円を負担する。支払い完了までに約30年かかるとされる。

 Q  そのお金はどこから?

増加分を補うため、電気料金への上乗せや税金による国費の新たな対応が相次ぎ、家計の重荷になることは避けられない。

廃炉費用は原則として東電が負担する。送配電事業を合理化しても、送電線の使用料を値下げせずに廃炉費用に回せる新たな制度が設けられる。電力小売りに新規参入した新電力会社も東電の送電線を使うため、東電管内では契約する電力会社によらず、料金が高止まりする。

賠償費用は、東電と大手電力各社が負担しているが、増加分は送電線の使用料に上乗せされる。現在の契約先にかかわらず、原発による電気を使ってきた消費者に広く負担を求めるという考え方だ。月に約260キロワット時前後を使う標準家庭で、月額18円を2020年から40年間払い続けることになる。

 Q  税金は使われるの?

帰還困難区域の除染費用は税金が使われる。それ以外の除染は国が1兆円で取得した東電の株式を売却した利益で賄う計画だが、株価低迷で時価総額は8千億円前後になってしまっているし、そもそもそれは本来、国に返却すべき金だ。

中間貯蔵費用は既に毎年、税金で350億円を負担しているが、17年度からは470億円に増やす方向だ。