思いをぶつけた渾身のダンスで、世界一の栄冠を手に入れた。4月にアメリカで開かれたダンスドリルの国際大会で、大阪・箕面高校ダンス部の3年生がヒップホップ部門ラージ編成で初優勝した。引退前の最後の大舞台。大会2日前の「事件」を乗り越えた、最高の踊りだった。 (文・白井邦彦 写真・大林博之)
アメリカに着いた3年生30人は、半ば観光気分だった。「2 0 1 3 ミスダンスドリルチームUSA /インターナショナル」に出場するための旅だったが、スケジュールの影響で練習時間のとれない日が2日ほどあり、空いた時間で買い物や観光をして楽しんだ。何をするために渡米したのか、多くの部員が忘れていた。
「事件」は本番の2日前に起きた。部員たちが大事な練習に遅刻し、顧問の高木克彰先生の逆鱗に触れたのだ。高木先生は「練習を見ない!」と告げ、部員たちは途方に暮れた。部長の大西真由さん(3年)は「気が緩んでいた。謝っても許してもらえないと思った」と振り返る。
みんなで話し合った結果、ダンスで反省の気持ちを示すことになった。先生が練習場を去ってから2時間、これまで教わってきたことを思い出しながら、総復習のつもりで練習した。
翌日、高木先生に懇願しダンスを見てもらった。必死で踊ったみんなの思いは、先生の胸に届いた。滝本真美子さん(3年)は「今までで一番の演技だと言われ、うれしかった」と話す。
安堵と共に自信を得た部員たちは、翌日の本番でアメリカのチームに競り勝ち、世界一に輝いた。高木先生は「鳥肌が立ちました。本当に最高のパフォーマンスだった」と、彼女たちをたたえる。この大会で引退する3年生にとっては、優勝以上にうれしい一言だ。足立こごみさん(3年)は「ダンスで最も大切なのは気持ちなのだと、この大会に教えてもらった気がする」と笑顔を見せた。