7月、米国でもっとも歴史あるダンス大会「Showstopper FINAL(ショーストッパー・ファイナル)」ソロシニア・ジャズ部門(15~19歳以下)で、一条未悠さん(福島·福島東稜高校3年)が優勝を飾った。152cmの体格をみじんも感じさせないダイナミックで表現力豊かなパフォーマンスで、海外の観客をとりこにした。(文·写真 中田宗孝)

「自分のためのステージ」

18歳の高校生ダンサーが、世界の舞台で頂点に立った。ビヨンセやブリトニー・スピアーズなど、著名なアーティストを輩出した由緒ある大会「Showstopper FINAL」で一条さんは、パワフルで独創性に富んだ手の動きを中心に構成したダンスで躍動。演技後には、彼女のダンスを見た審査員や観客など多くの外国人から称賛の言葉を掛けてもらったという。

世界大会で優勝した一条さん。英語が好きで「思った以上に聞き取れたし、会話もできた」と笑う(学校提供)

「ステージに上がった瞬間、目の前に『自分の世界』が見えた」と大会を振り返る。「まるで自分のために用意されたかのようにステージが光って見えたんです。自信が満ちあふれてきて、自分の世界に入り込むスイッチが入りました」

振り付けは自作、和をコンセプトに

大会用の選曲や振り付けは、自ら考えている。小1から始めたダンスに打ち込む中で、自然と振り付けを思いつくようになったという。大会でのダンスは、「力強さ」や「大きな動き」などを念頭においてアイデアを練った。

「ワック(手をしなやかに高速回転させたり体に巻きつけたりする動作が特徴のダンス)」と呼ばれる、一条さんが得意とするダンスの動作を、フリに多く取り入れた。

振り付けも自ら考えている

2月に日本国内の大会で優勝し、日本代表となった。「(米国大会用の)曲やフリは『和』をコンセプトに、イメージをカタチにしていきました」。約3カ月で米国大会用のフリが完成。本番のステージでも扇子をあおぎながら、あでやかなダンスで魅せる一幕もあった。

ダンス部部長として部員を指導

普段の学校生活では、昨年5月に部へと昇格したばかりのダンス部の部長を務める。高校からダンスを始めた部員もおり、一条さんは熱心に部員の練習に寄り添う。「部員一人一人をじっくり観察して、その人にあった上達法を伝えるよう意識してます」

部長を務めるダンス部では、部員一人一人にあった練習内容を伝える

部活では、ソロのダンサーとして高みを目指すのとは別のやりがいを感じている。「みんなが自主練を頑張って成長する姿。上手くなってると、めっちゃ感動します。みんなの気持ちを一つにして踊るのも楽しいし、心強い」

コロナ禍で、ダンス部がパフォーマンスを披露する機会は少ない。「せめて、より多くの在校生に私たちのダンスを届けたい」と願う。

世界で活躍するダンサー目指して

将来の夢は、世界をまたにかけて活躍するダンサー。各地をダンス指導してまわりたいとも思う。「私の生きる活力はダンス」。米国ダンス大会での優勝で「世界」を知り、理想とするダンサー像に一歩近づいた。

現在も平日3時間、休日7時間、ハードな練習に一人励む日々が続くが、数々の試練をはねのける、強い言葉を一条さんはすでに持っている。「私はダンスが好き!」。それは、EXILEのダンスパフォーマンスに夢中になり憧れた、幼いころの自分と変わらない。

いちじょう·みゆ 2004年6月17日、福島県生まれ。福島市立信陵中学卒。ソロ·シニア部門で優勝した米国ダンス大会「Showstopper FINAL」では、高得点者に与えられる「クリスタル賞」、ソロシニア全8部門の中から選ばれる最高の賞「オーバーオール賞」も獲得し、日本人個人初となる3冠を達成した。