「心はひとつ」を合言葉に、世界へ羽ばたくダンス部員(学校の武道場で)
福岡大若葉(福岡)ダンス部が、世界へ活躍の場を広げている。生徒自ら考え、厳しい練習から生まれた息の合った美しい表現は、自然と人への慈しみに満ちており、プロの振付師も絶賛する〝心の舞〟だ。
(文・写真 南隆洋)
観客総立ち プロも驚く
昨年11月、ドイツ・ベルリンで開かれたチアリーディング世界選手権。15人による若葉の団体演技が終了した瞬間、観客は総立ちになり拍手が鳴りやまなかった。チームは3部門で金、銀、銅メダルを得た。
9月には、世界最大級のプロ主体の競技会「Legend・Tokyo・Chapter.5」(横浜アリーナ)にOGと合同60人で創作ダンス「阿修羅(あしゅら)」を披露。総合得点4位で、惜しくも入賞は逃したものの、マイケル・ジャクソンの振付師だったトラビス・ペイン審査員は「驚くほど見事で衝撃を受けた。受賞しなかったのは非常に残念」と、若葉のダンスが「世界水準」に達していることを認めた。
学び合い支え合う
中学時代は水泳やテニスなどダンスとは無縁の世界から入ってくる部員も多い。入部後5カ月間は「ファイヤ-」「ワンツースリー」などと大きな声をおなかから出す練習。柔軟体操と筋トレで基礎を入念につくり上げる。毎日3時間の練習のうち30分は柔軟体操。全開脚できない生徒も「1年たてば何とかなる」と顧問の井手麻子先生(同部OG)。
主な練習場は同校武道場。創部以来の指導者、松尾京子監督や井手先生が口を開くと、全員が爪先立ちのポーズで背筋を伸ばし耳を澄ます。話が長くなっても微動だにしない。全部員が持つノートには、言葉やフォーメーション図が丁寧に書き込まれていた。
部員たちは上下の別なく指摘し合い、助け合い、自己の限界へ挑む。「人のために心をつかう」(松尾監督)日々を積み重ねて、感動の舞に仕上げていく。
世界選手権のチアリーダーで、昨年暮れの定期公演(約3時間を昼夜2回)で19の作品をこなした藤田葵(3年)は「1年の合宿はきつかったけど、今は、時間があっという間に過ぎていく。仲間との絆は家族以上になった」と言う。
被災地へ笑顔の支援
東日本大震災以来、昨年まで5年連続して被災地でダンスを披露し語り合ってきた。ほかにも、九州北部豪雨、福岡県西方沖地震、長崎県の雲仙・普賢岳噴火災害などの被災地に笑顔と元気を届けてきた。
前部長の福永華乃(3年)は「踊ることしかできない私たちに何ができるの?」と不安だったが、現地で「思ってくれるだけでありがたい」と笑顔を返してくる被災者に、自分たちの可能性と現実を知った。「震災はまだ終わっていない。卒業後もずっと東北のことを伝えていく」と意気込む。
そして、その思いを託した作品「不死鳥にかける」を自分たちで作り上げ、暮れの定期公演で披露した。焼けた灰からよみがえり、たくましく羽ばたく不死鳥を29人の群舞でドラマチックに描き出し、舞台と延べ2千人の観客が復興への思いを一つにした。
TEAM DATA
1973年創部。部員44人。全日本高校・大学ダンスフェスティバルで最高賞の文部科学大 臣賞7回、全国中学・高校ダンスコンクール優勝13回、準優勝6回など。海外では2005年 と11年に米テキサス州で開かれた世界大会で総合優勝。定期公演は昨年で24回。部是は 「心はひとつ」「一人はみんなのために、みんなは一人のため