将来、世界を舞台に活躍するための勉強を高校生のうちから―。そんな狙いから昨春、全国の高校56校が国からスーパーグローバルハイスクール(SGH)に指定されてから1年が経とうとしている。高校ごとに決めたテーマで、生徒たちは課題研究に取り組み始めている。学んだ成果の発信も始まった。4校を紹介する。

フィリピンの課題探る【〈東京〉順天高校】

順天高校の生徒3人がフィリピンを訪ねた。写真は、インタビューしたスラムの人たちと

 

順天高校は、フィリピンが抱える課題を発見し、解決を目指すプロジェクトに取り組んでいる。昨年12月には1年生3人がフィリピンに派遣され、スラムの住民へのインタビューや、現地の高校生との交流などを通じ、課題を探ってきた。

 

現地では、発見や予想外のことの連続だった。真っ先に衝撃を受けたのは物ごいをするストリートチルドレン。その後、貧しい人々が住む村や、ゴミを集めて生活する人たち、親がいない子どものための施設などを訪ねたが、「『何かできることはありますか』と質問すると、『何もない』と言われた。もっとフィリピンのことを知る必要があると感じました」と川辺瑠美さんは振り返る。

荻風香さんは、「例えば、宗教が深く根付いていることを理解しないと、フィリピンの人の考えや行動が分からない」と付け加える。現地の高校生との交流では、お互いの国のよい点、悪い点を出し合った。鈴木彩花さんは、「フィリピンと私たちの両方で一緒に何かをしていきたいと思いました」と話す。

生徒たちはフィールドワークの成果を校内で報告。プロジェクトに取り組む生徒が課題解決のアイデアを出し合っており、10月には、10数人で再びフィリピンを訪れる。
 2月に東京都内であった「市民社会をつくるボランタリーフォーラム」では、他校生徒の前でも発表した。

 

研究成果 英語で発表【〈大阪〉北野高校】

北野高校の生徒は、SGH課題研究の成果を英語で発表した

北野高校のSGHのテーマは「アジアと学び合う―夢を実現する国づくり」。1月31日にあった課題研究発表会では、2年生の4グループが生徒や保護者を前に英語で発表した。

高橋悠介君たち10人の班は、インドネシアと日本が連携した防災教育プログラムを提案した。インドネシアの人は日本ほど大地震や津波災害を想定していないというデータに着目。インドネシアの中高生にハザード(危険度)マップを作ってもらい、それを基に「防災アプリ」を開発し、啓発に役立てるというアイデアだ。

研究は、京都大の先生や大学院生の協力も得て進めた。高橋君は「準備に昼休みや放課後も使って大変でしたが、プロジェクトを進める面白さがありました」と振り返る。松本一紗さんは、「ゼロから企画を生み出すのにはエネルギーがいりました」と話した。
 昨年12月には2年生22人がマレーシアを訪問し、現地高校生と交流したり、企業を訪ねたりもした。

 

NAGANOの魅力を発見【〈長野〉長野高校】

「NAGANOブランドを世界へ」というスローガンを掲げ、長野の魅力を世界に発信する観光戦略をテーマにした課題研究に取り組んでいるのが長野高校だ。1年生全員がスポーツ、農業・食品などの分野に分かれ、テーマに応じたフィールドワークを実施した。
昨年11月半ば、県内64カ所を訪ねるフィールドワークを学年一斉に行った。例えば、「地域ブランド」分野の6人は、栗や郷土料理、葛飾北斎の作品などを生かした「小布施ブランド」で人気の小布施町を訪ねた。老舗栗菓子店「小布施堂」では、長野高校OBという社長に、「地域のブランドとは?」などと質問をしていた。

長野高校の生徒は、研究テーマに沿ったフィールドワーク先を自ら探した。写真は、小布施町の老舗栗菓子店でのインタビュー

2月10日には、長野市内のホテルなどで発表会を開催。分野ごとに13分科会に分かれ、各班が発表。ほかの生徒や大人のアドバイザーが質問や意見をぶつけた。「長寿・健康」の分科会の司会を務めた小澤美稀さんは「着眼点の置き方や質問の仕方からも学べた」と手応えを語る。発表会の質疑もふまえ、生徒たちは新年度さらに研究を深めていくという。

 

寸劇も盛り込み成果発信【〈兵庫〉葺合(ふきあい)高校】

葺合高校の生徒は、SGHの取り組みや学習の成果を寸劇形式で発表した

葺合高校のSGH中間発表会が1月30日に開催された。私たち国際科の1年生が「神戸から綾なせ世界 共生への扉を開くグローバル・リーダーの育成」をテーマに勉強してきた成果を他校の先生たちを前に発表した。

英語の公開授業では、フィリピンと日本の子どもたちについて、「人権」「環境」「経済」などの視点から調査してきた内容を英語で発表した。これまでにも発表を重ねており今回はその集大成。できるだけわかりやすい表現を使うなど工夫した。

SGHの授業や、コンテストへのチャレンジなど、SGH全体の説明も生徒が担当した。授業の説明に寸劇や漫才を盛り込んで聴衆の笑いを誘った。
(高校生記者・小嶋里菜=葺合高校1年)