第92回全国高校サッカー選手権が12月30日から1月13日まで東京・国立競技場などで開催された。初出場の綾羽(滋賀)は初戦で修徳(東京)と対戦。0-1で敗れたが、「自分たちで考えるサッカー」をやり切り、部に新たな歴史を刻んだ。 (文・白井邦彦 写真・幡原裕治)

 

勝つも負けるも自分たち次第

今年度の綾羽は、部員たちが自ら練習メニューや試合戦術を考えるボトムアップ方式を採用し、全国を目指してきた。昨年1月の県新人戦でベスト8に終わったのがきっかけだった。ガンバ大阪ジュニアユースでの指導経験を持つ岸本幸二監督(41)は「私の引き出しはいつでも出せる。でも、選手が自分で引き出しを増やさないと全国へは行けない」と話す。

主将の山本涼太(3年)=滋賀・甲南中出身=を中心に、部員たちは「チームの強みは何か」「弱点を克服するにはどうすればいいか」などを徹底的に話し合った。山本は「勝つも負けるも自分たち次第。一人一人に覚悟のようなものが生まれた」と実感するようになった。

県予選の決勝では、野洲に先制点を奪われながらも全員が声を掛け合って守備を修正し、3-1の逆転勝利につなげた。試合後、山本は「この勝利で自分たちが間違っていなかったことを証明できた」と、涙を流して初の全国行きを喜んだ。

 

全て出し切れた

1月2日、全国選手権の初戦。綾羽は前半を0-0で折り返す。後半は俊足のFW奥井良樹(3年)=同・五個荘中出身=へボールを集めて何度もチャンスをつくったが、得点に結びつかない。34分には、修徳に自陣ペナルティーエリア付近からのフリーキックを決められて0-1に。これが決勝点となり、惜しくも初戦突破はならなかった。

それでも、山本の表情は晴れやかだった。「自分たちがやってきたことを全て出すことができました。後悔はしていません。最高の仲間に巡り合えた3年間でした」とグラ