ラグビーワールドカップで日本代表の活躍とともに注目を浴びたのが、五郎丸歩選手のゴールキック前のポーズ。これには、どのような意味や効果があるのだろうか。
(山口佳子)
「決まった手順」で実力発揮
「祈るようなポーズに注目が集まっていますが、キック成功率が高まったのは、ボールをセットしてからキックするまでの一連の動作を、いつもの決まった手順で行ったからです」と、教えてくれたのは、文化学園大学でスポーツ心理学を教える安永明智准教授。
アスリートなどが大事な場面の前(プレ・パフォーマンス)に行う決まったしぐさや思考(ルーティン)を、スポーツ心理学では「プレ・パフォーマンス・ルーティン」と呼ぶ。平常心でいることが難しい試合や本番でも、実力を発揮するために有効だとされる。
その理由は、(1)キックなどの「課題」の前に、呼吸や心理状態を安定させ、心と体を準備する時間がとれる(2)ルーティンの手順を追うことだけに集中すれば、プレッシャーや環境の変化など、本番特有のストレスを軽減できる──ことなどだ。
ポイントは「普段から」
「プレ・パフォーマンス・ルーティン」は、キックやサーブの前など、静止している状態で行う必要がある。普段の練習から自分に合ったルーティンを実践することが大切だ。
キックやフリースローなど「課題」が成功しやすい状況や、精神的に落ち着ける状況を練習時から考え、スムーズに課題に入れるルーティンを作ろう。サッカーのPKで「強気で行こう」と自分に言い聞かせるなど、動きに思考を加えることも有効だ。
試験にも応用できる
安永先生は「試験で実力を発揮するためにも応用できます」と話す。例えば、普段から勉強前に、目をつぶって深呼吸をし、心を落ち着かせてから鉛筆を持つといったルーティンを取り入れてみよう。本番前に同じことをすれば、平常心で試験に臨める。