村上美紗さん(宮城・仙台工業高校3年)の写真作品「馬の形相」を紹介します。レースに臨む馬の苦しげな表情を切り取ったこの作品は、7月に開催された全国高校総合文化祭(かがわ総文祭2025)の写真部門で最優秀賞の一つ・文化庁長官賞を受賞しました。撮影した村上さんに、作品に込めた思いを聞きました。(文・写真 椎木里咲)

馬の苦しげな表情「他の人にも伝えたい」

─作品のテーマを教えてください。

馬が重りを載せたソリをひいて競争する「ばんえい競馬」で撮影しました。私はもともと馬が好きなのですが、走る馬の苦しそうな表情を見ていたら、私も感情移入して苦しくなってきて……。「他の人にも馬の気持ちを伝えたい」と思って撮影しました。

「馬の形相」を撮影した村上さん 

─こだわったり、工夫したりしたポイントは?

馬だけでなく、馬をサポートする人間も一緒に撮影したところです。背中を見ていると、「馬と一緒に人も頑張ってるんだ!」と伝わってきたので、入れたいと思いました。

もともとカラーで撮影していました。ですが、データを白黒にしてみると、より馬の表情がくっきり見えると分かり、白黒にして仕上げています。

一瞬を狙い「決めるぞ!」

─難しかった部分や大変だった部分はどこですか?

会場は混みあっていて、一度決めた位置から動けませんでした。馬と距離もある上、私は背が低くて埋もれてしまうので、馬がコースにある坂の頂点に来たときしか狙えず、難しかったです。

─撮影中、印象に残っているエピソードは?

撮影した馬はレースの最後尾にいた馬でした。「最後のシャッターチャンス、ここで決めるぞ!」という思いで撮影しました。撮影したのは4月でしたが、会場には人が多くて、暑くてしんどいのも印象的です。

表情に注目してみて

─よい写真を撮るためのコツを教えてください。

「表情」に注目することです。例えば今回の作品は、馬に加えて人も一緒に撮ったところ、馬の表情が生きました。対象だけに注目するのではなく、まずは大きめに撮って切り取ってみると、よい表情が撮れる時があります。