幅広いプレーで得点を重ねる赤穂ひまわり

 バスケットボール一家に生まれ、中学時代から世代別日本代表に選ばれ続けてきた赤穂ひまわり(千葉・昭和学院3年)。高校進学後も1年時からエース候補としてスタメンに起用されてきたが、タイトルとはいまだ無縁。高校生活最後の夏に、大輪の向日葵(ひまわり)を咲かせられるか。(文・写真 三上太)

仲間のけがで成長

「春先に3年生の主力3人がけがをした。代わりにスタメン起用された2年生も最近けがをして、インターハイ本番に出られなくなった」。チームの近況を尋ねると、赤穂は困ったように話す。

バスケットボールは「経験のスポーツ」といわれるほど、試合経験がプレーに大きく影響する。決して広くない空間で、瞬時に次のプレーを選択するには、経験が武器にもなるからだ。けがで離脱した選手に替わって新たにスタメン入りした選手も、下級生ばかりで試合経験は著しく少ない。高校最後のインターハイを前に、エースの赤穂は崖っぷちに立たされた。

6月上旬の関東大会も3位に終わったが、「結果的には良かった」と言う。

「今年のチームは大会の初日の出来が良くない。シード権を取っていたら、いわゆる『シード権あるある』になってしまうかもしれないから」

2回戦から姿を現すシード校が、1回戦を勝ち抜いたチームに敗れることは多々ある。そんな「シード権あるある」になるのなら、1回戦から戦った方が勢いに乗りやすい。

チームの苦しい台所事情を冷静に見つめ、それでも勝つためにはどうしたらいいか。エースとして、また、最上級生としてチームを引っ張る意識の高さがうかがえる。

そうした意識の変化は、プレーにも変化を生み出す。

関東大会のことだ。初戦の明星学園(東京)戦で、赤穂は相手のエース、オコエ桃仁花(3年)を7得点に抑え込んだ。自身も6得点に終わったが、「チームメートの調子が良かったので、得点はみんなに任せた」と振り返る。

しかし2回戦の埼玉栄(埼玉)戦、準決勝の東京成徳大高(東京)戦とチームメートの得点が伸びていかなかった。赤穂は試合の途中でオフェンスのギアを上げ、埼玉栄戦で27得点、東京成徳大高戦で31得点を決めた。チームの状況、ゲームの流れ、マッチアップする選手への対応、それらを見極めながら「少しずつ、状況に合わせたプレーができるようになってきた」。

赤穂を中学1年生から見ている鈴木親光監督も「意識が変わってきているし、プレーの幅も生まれてきた。以前は単調なドライブだけだったが、今は強弱をつけられるようになった。3点シュートもある」と評価する。

積極的に攻め込んでいくタイプではないと自認する赤穂が、チームメートのけがをきっかけに、エースとしての殻を破ろうとしている。

バスケ一家に育つ

父・真さんは元日本代表選手で、母・久美子さんも大学まで第一線でプレー。女子日本リーグ(Wリーグ)でプレーする姉のさくらは昨季のリーグ新人王。双子の兄の雷太は市船橋(千葉)のエースとして関東大会を制し、中学生の妹もバスケ部に所属という、まさにバスケ一家に生まれた。

しかし当初はバスケをするつもりがなかったという。姉が始め、双子の兄も続き、「家に誰もいなくなってつまらないから」という理由でバスケを始めたが、自他ともに認める「きょうだいで一番運動神経がいい」赤穂は、瞬く間に上達していく。

チームの核になる

昭和学院中3年時には飛び級でU-16(16歳以下)日本代表に入り、アジア選手権を戦い、翌年は世界選手権に出場。さらに飛び級でU-18女子日本代表にも選出されている。

「将来はフル代表に入りたい」と言い、「2020年の東京五輪に出たい気持ちがある。少し若いかなとも思うが、チャンスもあると思うので頑張りたい」。夢はすでに世界に向いている。

しかし中学、高校と国内のタイトルは、いまだに1つも取れていない。

「一昨年は、苦しい時間帯でも(チームメートだった)お姉ちゃんが悪い流れを食い止めてくれた。でも昨年はお姉ちゃんが抜けて、核になる選手がいなくなり、崩れると崩れっぱなしだった」

だからこそ、今年は自分がチームの核にならなければいけない。チームの大半を占めることになる下級生をいかに引っ張り上げられるか。

「チームはいい方向に変わっている。それが分かるのが楽しい」と苦境を楽しむ姿勢は、成長の証しでもある。ピンチをチャンスに変えるエースが、最後の夏に挑む。

今年こそ最高の笑顔を咲かせたい

あかほ・ひまわり
1998年8月28日、石川県生まれ。昭和学院中卒。小学3年生からバスケを始める。中学3年生でU-16アジア選手権に出場し準優勝に貢献。翌年にはU-17世界選手権、U-18アジア選手権にダブル出場を果たす。184センチ、69キロ。
 TEAM DATA 昭和学院女子バスケットボール部 
部員38人(3年生12人、2年生13人、1年生13名)。インターハイ優勝1回、全国高校選抜優勝大会(ウインターカップ)優勝5回。