自転車は便利な乗り物だが、一歩間違えると事故を起こし、「加害者」になる可能性がある。自転車に乗り慣れていない人が増える時期新入学シーズンは、特に注意が必要だ。(黒澤真紀、椎木里咲)
自転車に慣れない新入生は「事故を起こしやすい」
全校生徒の7割程度が自転車通学をするとある高校の教員は、「4月は事故が増える」と語る。高校生になったばかりの新入生が、まだ自転車の運転に慣れていないためだ。

「坂道を猛スピードで下って転ぶ、車と接触する……中学時代に自転車に乗ってこなかった新入生は、事故を起こしやすいと感じます」
加害者にも被害者にもなりうる
街中で危険な運転を見かける機会もある。読者のエミさん(仮名・高2)は危うく事故になりかけた場面に遭遇した。「自転車が左右を見ずに猛スピードで走ってきて、横断歩道を渡ろうとしていた歩行者とぶつかりそうになった。とても危険でした」
16~19歳は「加害者になるケース」が最多
自転車は高校生にとって身近な乗り物だ。しかし、事故に遭ったり、他人を事故に巻き込んで「加害者」になったりするケースがある。
全国の高校や教員に向け自転車の安全講習を行う自転車ジャーナリストの遠藤まさ子さんは、中高生の自転車運転に対して警鐘を鳴らす。「2022年の交通統計(交通事故総合分析センター)によると、事故の主な原因を作った『第1当事者』となった自転車運転者は16~19歳がもっとも多い。加害者になるケースが非常に多いです」
事故を起こしたら「すぐ110番」
自転車で事故を起こしたら、すぐに110番通報しなければならない。道路交通法では、交通事故を起こした際に、被害者を救護し、警察に報告する「救護義務」が定められている。
事故記録は後日の作成が難しい。「怖くて通報できなくても、親や学校に必ず連絡を。相手が『通報しなくていい』と言っても必ず通報してください」
過去には、高校生が歩行者と軽く接触した際、相手がその場では「大丈夫だから帰っていいよ」と言ったものの、後日「むち打ちで働けなくなった」と高額な賠償を求めて学校に連絡した事例もあるそうだ。「自分の身を守るためにも警察への通報を徹底してください」
加害者は高額な賠償金を支払う可能性も
相手にけがをさせてしまったり、死亡させてしまったりすると高額な賠償金を支払う可能性もある。
2002年には高校生が無灯火で走行中に看護師の女性と衝突し、相手が手足のしびれで歩行困難となり仕事を続けられなくなったケースでは、約5000万円の賠償命令が下された。「女子高校生は『ながらスマホ運転』や『無灯火』といった法律違反を重ねていました。そのため、過失割合が高くなったのです」
自転車保険への加入は必須
自転車保険への加入は必須だ。賠償金が発生しても、保険に加入していなければすべて自己負担。賠償金の支払いをしぶり続けると銀行口座や給与を差し押さえられる可能性もあり、自己破産でも逃れられない。「物損事故も多いです。加害者になる場合も想定して個人賠償がカバーされる保険加入をおすすめします」
えんどう・まさこ
自転車ジャーナリスト。自転車の安全な乗り方について啓発活動を行う「自転車の安全利用促進委員会」で委員を務める。新聞やテレビ番組などで、自転車の利用や安全指導について解説するほか、全国の高校生や教員に向けて自転車通学指導セミナーを開催している。