通学で使う人も多い自転車だが、ヘルメット着用率の低さは課題の一つだ。「髪型が崩れる」などと、ノーヘルメットの高校生は後を絶たない。しかし、着用すれば事故に遭ったときの死亡率をぐんと下げられるのだ。(黒澤真紀、椎木里咲)

自転車通学でヘルメットをかぶらない高校生たち

全校生徒の7割が自転車通学をするとある高校の教員は、ヘルメット着用率の低さを課題に感じている。「現在の着用率は1割程度。学校で啓発活動を行い、徐々に増えている状況ではあるのですが……」

ヘルメットをかぶらず通学する高校生が多い(写真はイメージ)

自転車運転マナーに関するポスターを掲示したり、安全運転に関する講習会を行ったりと積極的に働きかけている。しかしノーヘルメットで通学する生徒が大半を占める状況から脱せていない。

着けない理由は「周りがつけていない」「髪が崩れる」

「自転車を運転する際にヘルメットをかぶっていない」という読者の高校生に理由を聞くと、「危険を感じない」(3年)、「朝は時間がなく、ヘルメットに気を配る余裕がない」(3年)、「そもそも持っていない」(3年)とさまざまだ。「髪型が崩れる」という理由で着用していない女子生徒も複数いた。

罰則なく、着用率は全国で2割未満

2023年4月から、自転車運転時のヘルメット着用は全年齢で「努力義務」と定められた。しかし努力義務には拘束力がなく、違反しても罰則はない。警視庁によると、現状の着用率は全国平均で17.0%だ。

全国の高校や教員に向け自転車の安全講習を行う自転車ジャーナリストの遠藤まさ子さんは「罰則がないからといって軽視するのではなく、事故から自分を守るために積極的に着用してほしい」

着用で頭を損傷から保護、致死率も低下

「ヘルメットを着用せずに事故に遭うと、着用時に比べて致死率が2倍以上高くなります」と警鐘を鳴らす。ヘルメットを使えば、事故に遭っても頭部が守られ致死率が下がるのだ。

ヘルメット未着用だと死亡率が2倍以上に

後遺症のリスクが大幅軽減「見た目より命を優先して」

「重い障害が残るような事故でも、ヘルメットがあれば後遺症のリスクを大幅に軽減できます」。遠藤さんは、ヘルメットの着用が事故後の人生を守る鍵だと強調する。「自転車に乗ったままトラックと接触して大けがを負ったものの、ヘルメットを着用していたため脳に損傷がなかったという例もあります」

命を守るため、自転車運転時はヘルメットを着用しよう。 

 

 

えんどう・まさこ
自転車ジャーナリスト。自転車の安全な乗り方について啓発活動を行う「自転車の安全利用促進委員会」で委員を務める。新聞やテレビ番組などで、自転車の利用や安全指導について解説するほか、全国の高校生や教員に向けて自転車通学指導セミナーを開催している。