高校生らが新規事業のビジネスプランで競う「第12回高校生ビジネスプラン・グランプリ」(日本政策金融公庫主催)最終審査会が1月12日に行われた。宮城県農業高校(宮城)の生徒たちが考えた、「稲作の新肥料」に関するビジネスプランがグランプリを獲得した。(文・写真 中田宗孝)
新肥料で8割コストカット
宮城県農業高校農業クラブの10人組「チーム温故知新」は、稲作の新しい肥料と栽培方法を開発し、全国の農家に販売するプランを発表した。
新肥料は、環境にやさしい「脱プラスチック」で開発。低価格も実現させ、従来と比べて8割安くできる見通しだ。

ブドウの栽培方法にヒントを得た
約90年前に発表されたブドウの栽培方法を応用し、稲作の中期に新肥料を与える、新しい栽培方法も考えた。学校の水田で5回の実証実験を行い、新肥料の効果を確かめた。「新しい栽培法は肥料をまく回数が減り、労務費も6割減。農作業が楽になるんです」(星碧虎(ほし・あおと)さん・3年)。
助言を求めた肥料会社からは「肥料を減らせば収穫量も減る」と伝えられたがあきらめなかった。「従来の肥料を使った稲作と比べても収穫量は変わりませんでした。味もおいしいんです」(庄子怜未さん・2年)

「肥料まき忘れ」の失敗からアイデア発案
新肥料のアイデアは、田植え作業中の大失敗がきっかけだ。一昨年5月、田植え機の肥料が出るボタンを押し忘れた。約1カ月後、苗の生育が悪い水田を見つけて、慌てて肥料をまいたが、「先生からは『もうあきらめろ』と言われてしまいました(苦笑)」(星さん)。
だが、通常の3分の1の肥料しか与えていないのに、予想に反して力強く成長。十分に肥料を与えた苗と比較しても遜色なかった。「『失敗は成功の元』の言葉を信じ、原動力にして、ビジネスプランをかたちにできるまでやりきれました」(星さん)
「当たり前のことに疑問を持つ」姿勢が大事
阿部快海さん(3年)は、「ビジネスを展開するうえで、当たり前のことに疑問を持ち、視点を変える大切さが重要だと気付いた」という。
星さんは「人と人との出会いが何より大事」だと話す。「多くの企業や農家の方々の協力がありました。さまざまな方との出会いでビジネスプランを磨けたと感じています」

今後は、新肥料が米以外の野菜や果物などにも活用可能かどうかの検証を進めていく。農機を扱う大手機械メーカーからの打診を受け、新肥料の商品化に向けた取り組みも始まるという。
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- 「第12回高校生ビジネスプラン・グランプリ」結果
- 校名、チーム名、ビジネスプラン名の順に記載
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■グランプリ
- 宮城県農業高校(宮城) チーム温故知新「Re:温故知新」
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■準グランプリ
- 浜松学芸高校(静岡) 社会科学部地域調査班「防災と観光で災害と共に生きる社会をつくる3日体験プラン」
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■審査員特別賞
- 玉名工業高校(熊本) Ⅴ Ostriches「熊本から世界へ工業女子が伝える新材料の魅力」
- 智辯学園和歌山高校(和歌山) カロリーメイトブルーベリー味「らくSASコルセット 睡眠時無呼吸症候群で苦しむ人をゼロに」
- 早稲田大学本庄高等学院(埼玉) 中塚ノア「qUick」
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■優秀賞
- 名久井農業高校(青森) FLORA HUNTERS「いっぱい食べて返済不要~腹ぺこ学生奨学食料支援サービス~」
- 伊豆伊東高校(静岡) 伊豆伊東アグリスポーツ部「“援農スポーツ”で心も体も健康に!!」
- 飛鳥未来高校横浜関内キャンパス 矢萩友喜「ご縁BAR 人生を変えるきっかけを若者に」
- 小松島西高校(徳島) TOKUSHIMA雪花菜工房×藻藍部「食害魚の活用と藻場の養殖と ブルーカーボンDEニッコリリレー」
- 東京学芸大学附属国際中等教育学校(東京) 中川心之介「Fair Link」