商学部に「就職に強い」イメージを持つ高校生も多いのではないだろうか。早いうちから資格試験に挑み、インターンや留学をする学生もいるという。卒業後の就職先の傾向や、取得する人が多い資格などを明治大学商学部長の中林真理子先生に聞いた。(野口涼)
2年時に公認会計士に合格する学生も
―商学部の学生が取得を目指す資格は?
公認会計士、税理士、ファイナンシャル・プランナーが代表的な資格です。中でも難関国家資格の公認会計士を目指す学生の多くは、明治大学の場合、学内の養成機関である「経理研究所」で1年次から勉強を始めます。なかには2、3年次で合格して会計事務所で実務に携わったり、留学したりする学生もいます。最近ではアメリカの公認会計士の資格取得を目指す学生も出てきました。
―資格取得に役立つ授業はありますか?
明治大学商学部には、証券アナリスト、中小企業診断士、社会保険労務士、通関士などの資格取得に関連する授業も設置されています。ただし、必ずしも1年生のうちから勉強しないと取得できないわけではありません。一度社会に出てから必要に応じて目指す場合も多いようです。
金融系・情報通信系への就職が多い
―就職先にはどんな傾向がありますか?
従来、金融・保険業に進む学生が多いのが特徴でしたが、最近では情報通信系の企業に就職する学生が目立っています。ただし金融機関などは、システム開発の部署を別会社にしていることも多く、金融機関に進む学生が減ったわけではありません。しかし情報通信系のニーズの高まりが影響しているのは確かです。
商学部では金融のゼミで学んで金融機関に就職する学生や、「保険会社に就職したいから」と保険のゼミに入る学生もいます。研究と就職が比較的直結していることも特徴の一つです。その他の就職先は多様ですが、明治大学商学部の場合は「クリエイティブ・ビジネスコース」の授業を学び、いったん就職してから起業する学生も少なからずいます。
就職してからMBA取得を目指す人も
―学部卒業後、大学院に進む人はどのくらいいますか?
明治大学商学部を例にとると、学部を卒業して大学院商学研究科に進学するのは主に研究者を目指す学生で、残念ながら2桁いかないくらいの人数です。文系の学部の場合、卒業して就職するのと修士の2年が終わって就職するのとを比べたときに、修士を出た方が有利になることはまだまだ少ないのが実情です。特に商学部は比較的就職状況がよいため、大学院を目指す人はあまり多くありません。
―学部卒業後、MBA(Master of Business Administration/経営学修士)を取る人も少ないのでしょうか?
MBAスクール(明治大学ではグローバル・ビジネス研究科)は、学部を卒業してすぐに入学するというより、一度社会に出て仕事をしてから自身が必要を感じて入学するというパターンが多いです。私たち教員としては、学部の学生が卒業する際には「いつか勉強したくなったら戻ってきてほしい」という気持ちで送り出しています。
中林真理子(なかばやし・まりこ)
1968年東京都出身 。小石川高校卒、明治大学商学部卒、同大学院博士課程修了。博士(商学)。専門は保険、リスクマネジメント。研究テーマは「企業のリスクとしての倫理的課題についての考察」。主な著書に『リスクマネジメントと企業倫理―パーソナルハザードをめぐって』(単著、千倉書房)など。2023年4月より明治大学商学部長。