一部団体のデモで社会問題化

「ヘイトスピーチ」という言葉を知っているだろうか? 特定の人種や国籍、宗教などに差別意識を持ち、激しく罵倒したり憎しみを表現したりすることだ。在日コリアンが多く住む東京・新大久保や大阪・鶴橋で一部の団体が「朝鮮人を殺せ」などと叫びながらデモを繰り返し、社会問題化した。

差別をあおるヘイトスピーチをなくすために作られたヘイトスピーチ対策法が6月3日に施行されたが、直後に川崎市では、在日コリアンへの差別的言動を繰り返していた団体がデモを計画、それに反対する市民ら数百人ともみ合いになり、デモは中止になった。

法務省によると、ヘイトスピーチをしているとされる団体のデモなどは、2012年4月から15年9月までに全国で1152件確認された。同じ期間のデモの動画を抽出調査したところ、「日本から出て行け」「皆殺しにせよ」などの差別的、脅迫的な言葉が1803回あったという。

罰則規定なく効果は不透明

欧米ではヘイトスピーチを規制する法律を持つ国は多く、日本は国連人種差別撤廃委員会から包括的な人種差別禁止法を作るよう勧告を受けている。ヘイトスピーチ対策法の制定はこれらの動きを受けたものだが、憲法が保障する「表現の自由」との兼ね合いがあって罰則規定がないため、効果は不透明だ。