誹謗(ひぼう)中傷はエスカレートすれば人を死に追いやる可能性のある、大きな問題だ。誹謗中傷問題について知ってほしいと、東京農業大学第一高校の1年生4人がカードゲームを開発。誹謗中傷問題への思いを、代表して大西美緒さんに聞いた。(写真・本人提供)

アンチコメント減らすゲーム開発「誹謗中傷の構造学べる」

考えた商品をネットショップで販売するコンテスト「リアビズ 高校生模擬起業グランプリ」(金融知力普及協会主催)に出場し、「誹謗中傷問題を高校生らしく解決していきたい」という思いでカードゲームを開発。オンラインストアを開設し、販売した(現在はボードゲーム専門店「JELLY JELLY STORE」池袋店、オンラインストアで販売中)。

誹謗中傷を減らしたい強い思いで、カードゲーム「届け、このコメント。#とどコメ」を開発した。ゲームでは、誹謗中傷する「アンチ」、誹謗中傷される「インフルエンサー」、インフルエンサーを擁護する「ファン」の役になりきる。

誹謗中傷について学べるカードゲーム「届け、このコメント。#とどコメ」

「エゴサ」等の行動を通じて、インフルエンサーにアンチコメントが届く。全部で15枚あるアンチコメントカードが全てインフルエンサーに届くとバッドエンド、全てなくせたらハッピーエンドとなる。誹謗中傷される人だけでなく、「する人の気持ち」も理解できるという。

さらにゲーム内では、「アンチがファンに」「ファンがアンチに」と、役を変える機会がある。「ゲーム内だからこそ自分の感情に正直に行動し、最後に自分の行動を振り返ることで『誹謗中傷は許されないことだ』と理解できる効果が期待できます」

プレイした友人からは「誹謗中傷の構造が分かる」「コメントが届くとインパクトがあって、される側の気持ちになれる」と感想をもらった。

「言葉は人を追い詰める」有名人の自死に衝撃

大西さんが誹謗中傷問題を知ったのは2020年、プロレスラーの木村花さんがSNSで中傷され自死したニュースを見たのがきっかけだ。「当時は誹謗中傷の言葉すら知らなかったのですが、他人の言葉で人をここまで追い詰めることがあるのかと衝撃を受けました」

開発した4人

最近だと、タレントのフワちゃんがXで行ったお笑い芸人・やす子さんへの暴言、パリ五輪での選手や審判への誹謗中傷も印象に残っているという。

同級生に「バカ」と言われ続け苦しんだ過去

大西さん自身も、SNSではないが小学生の時に同級生から「バカ」と言われ続ける被害にあった。「最初は意味が分からず受け流していましたが、だんだんと『自分が何か言ったかな』『悪いことをしてしまったかな』と不安になり、情緒が不安定になりました」

保護者や教師の介入で解決したが、「自分は何もしていないはずなのに攻撃されるのはとても怖かった」という。相手の攻撃の理由は「なんとなく」だった。「なんとなくで、なぜ自分が標的になったのか、根本的にその人がなぜしたのか」と、いろんなことを考えた。「理由がなんとなくならどうすることもできなかったと思ったら、真剣にどうしたらよいか苦しんだ時間はなんだったんだと虚無感にも陥りました」

「自分の発言への責任」持ってほしい

誹謗中傷がまん延するのは「当事者が争うだけでなく、SNSでコメントするなど第三者が誹謗中傷に参加してしまうこと」が一つの原因だと考えている。

誰もが、自分の発言に責任を持つこと。聞いた人や読んだ人が不快な思いをしないか、傷つかないか考えて、思いやりのある発言をすべきだ。もし間違ったことを言ってしまったら、第三者に相談したり、意見を聞いたりして自らを客観的に分析する。「その上で、自分の行動を素直に受け入れ反省する必要があるのではないでしょうか。そもそも誹謗中傷をしないこと、もししてしまったら自分と向き合い再発を防ぐことが大切だと思います」