医学部には「頭が飛びぬけてよくなければ入れない」と考えている人も多いのではないだろうか。しかし近年は入試方式も多様化し、さまざまなバックグラウンドを持った人材が求められている。東京科学大学(旧東京医科歯科大学)医学部長の東田修二先生に、向いているか見極めるポイントを聞いた。(文・木和田志乃)
医療は「サービス業」
―どんな性格の高校生が医師に向いていますか?
特にこういう性格でなければ医師になれないということはありません。あえて言うと医療は広い意味での「サービス業」です。人としゃべったり、接したりするのが苦手な高校生は、医師になってから苦労するかもしれません。
そして医療職はミスの許されない職種です。いい加減な性格の人が医師になると、本人にも患者さんにも周りの医療スタッフにもトラブルをもたらすことがあります。
―最近は入試方式も多様化していますね。
将来の医師としてさまざまな能力やバックグラウンドを持った人に来てほしいとの方針からですね。以前の医学部入試は学力試験のみで数学、英語、理科などの成績が飛びぬけていい人でなければ入れないのが特徴でしたが、今は多様性を求めて複数の入試制度を取り入れています。一般選抜のほか、学校推薦型選抜や海外在住の高校生などを対象としたバカロレア選抜、地域医療に携わりたい人向けの地域枠選抜、すでに大学の他学部を卒業した人が編入できる学士編入学試験などがあります。入試の方法も、学力試験に加え、面接や小論文などが課されます。
英語力と体力は必須
―医師を目指す高校生が今やっておくべき行動や心がけ、勉強は何ですか?
医学部を目指す高校生は受験勉強で忙しく、いろいろな活動をするのは難しいかもしれません。ですが、医師になって読む論文は英語ですし、海外の医師や研究者と交流する機会は多くありますので、語学力は付けておいた方がいいです。自分の経験からもそう言えます。
また、データサイエンス、コンピューターサイエンスも医学の世界に入ってきていますので、コンピューターを使った情報処理の素地(そじ)はあった方がいいですね。その他、幅広い教養を身に付ける、ボランティア活動をする、部活動で体づくりをするということも重要だと思います。
学んだ知識がすぐに役立つ
―東田先生が感じる医学部で学ぶ楽しさや魅力は?
自分の経験として、講義や実習などで学んだことが自分の身に付いていく感覚が得られて楽しかったです。例えば、心電図を学ぶ前は単なる波線にしか見えませんが、学んだ後にはどういう病気を示しているか、わかるようになりました。採血も、ある程度理論を学んでトレーニングすると簡単にできるようになります。
1週間前にはできなかった技術が習得できた充実感が日々積み重なり、知識も身につき、それがすぐに役に立つ。それが医学部の講義や実習で感じた楽しさだと思います。
東田修二(とうだ・しゅうじ)
東京科学大学(旧東京医科歯科大学)医学部長。1978年、神奈川県立平塚江南高校卒。1984年、東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学医学部第一内科、横浜赤十字病院内科、トロント大学オンタリオ癌研究所等を経て2015年より東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科臨床検査医学分野教授。総合内科専門医、日本血液学会専門医、臨床検査専門医、がん治療認定医。