医学部医学科では、医師になるために、講義や病院での臨床実習を通じて必要な知識や技術を6年間かけて学んでいく。一体どんなカリキュラムで学びを深めていくのか、東京科学大学(旧東京医科歯科大学)医学部長の東田修二先生に教えてもらった。(文・木和田志乃、写真・東京科学大学提供)

座学から実習、医療現場へ

―医師を目指す医学部生が6年間どのように学ぶのか教えてください。

東京医科歯科大学の医学部医学科を例にすると、1年生の前期は教養教育として、数学や物理、化学、生物、語学、社会科学などを幅広く学びます。1年生の後期から2年生で、解剖学や生化学、薬理学、微生物学など病気に関連の深い「基礎医学」に触れていきます。

医学部6年間の学びの流れ

2年生後期から3年生は、診断や治療に関わる内科学、外科学、産婦人科学といった「臨床医学」を講義を通して深く学んでいきます。公衆衛生学や法医学などの「社会医学」も講義と実習で学びます。

4年生になると自らが希望する研究室に5カ月間配属され、興味のある課題について研究を行い、科学的な思考と技能を養います。その後の臨床導入実習では、例えば、人間の腕を再現した「模擬腕」を使って採血の練習をしたり、肺炎の患者さんを再現したマネキン人形を相手に聴診をしたり、手術の糸結びをしたりする実習などを経て、基本的な診療技法を習得します。

4年生の後半から6年生の9月にかけて約2年間の「臨床実習」が病院で行われます。臨床実習に臨むには、知識・技能・態度が一定水準以上にあるかを問う「共用試験」に合格する必要があります。全国の医学生が受験する公的な試験です。

6年生の10月には卒業試験、そして卒業前の2月に「医師国家試験」があります。合格すると医師免許が交付されます。

4年後半から患者相手に実習

―臨床実習ではどんな力を磨くのですか?

臨床実習は、医療チームの一員となって、例えば小児科で2週間、心臓外科で2週間、血液内科で2週間……など、一定の期間でいろいろな診療科を回ります。

患者さんを受け持って医療面接や診察を行い、診断を推論し、どんな治療方針が適切かを指導医と検討したり、主治医による患者本人や家族への治療内容の説明に同席したり、手術に立ち会ったり……医師として必要な知識や技術、態度を習得し、医療全体の流れをつかんでいきます。実習は大学病院の他、関連病院、クリニック、海外の提携大学などで行われます。

東京医科歯科大学の解剖学の講義の様子(医学部概要より引用)

看護師や技師を目指す学生と一緒に学ぶ

―最近の医療の変化を踏まえて行われている学びがあれば教えてください。

「チーム医療」や「多職種連携」と呼ばれるカリキュラムが、多くの大学で取り入れられています。医療現場では、一人の患者に対して医師や看護師、臨床検査技師などさまざまな医療スタッフがそれぞれ専門を生かして治療にあたっており、連携は不可欠です。

本学でも1年次から卒業するまで医師を目指す学生、看護師や臨床検査技師目指す保健衛生学科の学生、歯学部の学生と混合のグループで多職種連携をテーマに議論を行うカリキュラムがあります。互いの職種について理解を深め、連携して治療に当たる重要性について学ぶ機会を設けています。

 

 

東田修二(とうだ・しゅうじ) 

東京科学大学(旧東京医科歯科大学)医学部長。1978年、神奈川県立平塚江南高校卒。1984年、東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学医学部第一内科、横浜赤十字病院内科、トロント大学オンタリオ癌研究所等を経て2015年より東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科臨床検査医学分野教授。総合内科専門医、日本血液学会専門医、臨床検査専門医、がん治療認定医。