読者の中学生から、「XのDMで下品なメッセージが送られてきた」という経験談が寄せられた。不特定多数の人間とつながれるSNSだが、誹謗(ひぼう)中傷や下品なメッセージを送ってくる人もいる。被害を未然に防ぐには、どうすればよいのだろうか。(黒澤真紀)
「エッチな声を送って」
サクラさん(仮名、中学3年女子)は、X(旧Twitter)のDMで下品な音声を要求されたことがある。DMとは特定のユーザー同士のみでメッセージのやりとりができ、テキストはもちろん、写真や動画、音声も送れる機能だ。
「相手はライブ配信アプリ『ツイキャス』を通じて知り合った人。私が相手のX(旧Twitter)をフォローしたら、相手からもフォローが返ってきて、DMでメッセージのやり取りが始まりました。しばらくやり取りを続けていたら、突然『エッチな声を録って送って』と言われたんです」
相手はサクラさんより年上の男性と言っていて、自撮りも頻繁にアップしていた。当時サクラさんのXのアカウントは鍵をつけておらず、誰でも投稿を見られたり、フォローできたりする状態だった。プロフィールには学年を記載し、スタンプで顔を隠した写真をあげていた。しかし、今は鍵つきに変えたという。
即ブロックしてOK
サクラさんのように、SNSを使っていると突然被害に遭う可能性は誰にでもある。10代のSNS利用に詳しい千葉大学の藤川大祐先生は、自衛策や安全にSNSを利用するためのポイントを語る。
―中高生読者に今までに経験したSNSトラブルを聞いたところ、XのDMで下品な言葉を送られたという声が届きました。下品な言葉や誹謗(ひぼう)中傷が送られてきた場合、どう対処すればいいのでしょうか?
ひどい言葉を送ってくる人は一定の割合で存在するので、基本的には気にせずブロックするのがよいと思います。私自身もそうしています。以前は丁寧に対応しようとしていましたが、話がかみ合わない人も多いので、ひどいことを言われたら即ブロックする方針に変えました。
ブロック以外にも、相手には気づかれずにDMや通知を見えなくする「ミュート」を使う方法もあります。相手にはミュートをしたことは通知されないので、相手を不快にさせずに無視することができます。
―ミュートはどうやって使えばいいのでしょうか?
ブロックは相手から自分のアカウントへまったく接触できなくなりますが、ミュートは自分に通知が来ないだけで、相手からメッセージを送ったりアカウントを見たりすることはできます。相手に意識させずにトラブルを回避できますので、ぜひ活用してみてください。
何か言われても「あれ?そうだったっけ?」と、とぼけるのも一つの方法。これも大人の知恵というのでしょうか(笑)
証拠はしっかりとっておく
―下品な言葉や誹謗(ひぼう)中傷の被害に遭わないための自衛策はありますか?
いきなりブロックするのが怖い場合は、「嫌なことを書いてくる人はブロックします」のように、自分の方針をプロフィルに書いておくのも効果的です。相手が知らない人であれば、無視されていることに気づいて諦めることが多いです。ネットで不合理に人を中傷する行為は許されないことなので、あまり相手にしないようにしましょう。
―相手からの連絡がしつこくて身の危険を感じたり、「あなたの写真をばらまく」などと脅されたりするなど、被害にあった場合はどこに相談すれば良いのでしょうか?
相手からの連絡がしつこくて身の危険を感じていたり、「あなたの下着姿の写真をばら撒く」などと脅されるなどの被害に遭った場合、警察に相談してください。被害の証拠をしっかりと残しておくことが重要です。メッセージや投稿のスクリーンショットを撮り、日付や内容を記録して、時系列に沿ったメモを作成しましょう。これらの証拠を持って警察に行くと、捜査がスムーズに進みます。
―犯罪にならないまでも精神的苦痛を受けた場合はどうすればいいでしょうか?
公的機関や弁護士に相談できます。「インターネットホットラインセンター」が相談窓口として利用できるほか、無料の法律相談が受けられる「法テラス」もあります。トラブルが生じた場合には、一人で抱え込まずに、まずは信頼できる大人にきちんと相談してください。
編集部にあなたの声を聞かせてください
この記事はLINE公式アカウント「高校生新聞編集部」をフォローしてくれている読者の声をもとにつくりました。あなたもぜひフォローして、読者参加企画に協力してください。
藤川大祐(ふじかわ・だいすけ)
千葉大学教授、教育学部長。専門は教育方法学。文部科学省「ネット安全安心全国推進会議」委員、安心ネットづくり促進協議会普及啓発広報副委員長などを歴任。著書に『教師が知らない「子どものスマホ・SNS」新常識』(教育開発研究所)など。