読者の中学生から、「友達にTikTokに許可なく写真をあげられた」という声が寄せられた。10代のSNS利用が当たり前になり、見知らぬ人に個人情報が漏れるリスクも増加している今、「身バレ」のリスクやトラブルにはどう対処すればよいのだろうか。(黒澤真紀)
学校のジャージでTikTokを撮影
リナさん(高校3年女子)は中学校に入学してすぐのころ、TikTokを巡って担任から注意を受けたことがある。「学校のジャージを着て踊っている動画をアップしたら、担任にバレたんです。私や、同じように動画を上げていた生徒が呼び出されて注意を受けました」
リナさんのTikTokアカウントは鍵をかけていなかったので、誰でもアップした投稿を見られた。担任にどこで動画のことを知ったのか尋ねると、「リナさんの動画を見た生徒から教えてもらった」とのことだった。
「先生は『特定されたら何が起きるか分からない。ストーカー被害など、犯罪に巻き込まれる可能性があるから気を付けてほしい』と言っていました」。納得したリナさんは、今はアカウントに鍵をかけているという。
制服の写真や投稿…なんでも身バレにつながる
ちょっとした情報から名前や通っている学校などの個人情報が漏れる可能性がある。身バレを防ぐためにはどうすればよいか、10代のSNS利用に詳しい千葉大学の藤川大祐先生は注意点を語る。
―TikTokは10代に人気のSNS。校外で制服を着て撮影したり、学校の中で撮影したりする中高生もよく見かけますが、自分の学校が分かる情報を不特定多数が見る場所に載せることにはどんなリスクがありますか?
制服の写真から学校が特定されたり、投稿の中身で住んでいる地域が分かったりなど、どのようなことでも身バレにつながります。ただ、制服や風景から学校が特定されたからといって、直ちに危険につながるわけではないと思います。しかし、動画を見た人から個人的に連絡があったり、付きまとわれたりするかもしれないリスクがあるのは事実。トラブルに巻き込まれそうになったときに、「どう対処するか」もしっかり考えておかなければなりません。
顔を出さずにSNSを楽しむというやり方も一つです。絶対に身バレしたくないのであれば、自ら発信するのはかなり難しいと思います。
学校内で撮影をする場合は、事前に校則を確認してルールを守ることは大切です。24時間で投稿が消えるインスタグラムの「ストーリー」や、短い動画をアップできるYouTubeの「ショート」も同様です。
メッセージを受け取らない設定にする
―トラブルを避けるためには、どのようにすればよいでしょうか。
プロフィルに「個人的なやり取りを控えています」とあらかじめ明記しておきましょう。ダイレクトメールが届いても丁寧にお断りすることが重要です。メッセージを受け取らない設定にしておくのもよいでしょう。
―情報を発信したいけど身バレを防ぎたい場合は、どんなことに気をつけるべきですか?
これに関しては、明確な正解がないのが現状です。情報を発信する以上は、自分の責任でリスクを避ける必要があります。
例えば、自分が他人と関わる際にどういう方針を採るのかを考えてみてはどうでしょうか。誰とでもすぐに仲良くなって出掛けるのではなく、慎重に人付き合いを考え、自分が気に入った人とだけ出掛けるというやり方もあります。こうした人との関わり方は、ネットを使わなくても重要なことだと思います。
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藤川大祐(ふじかわ・だいすけ)
千葉大学教授、教育学部長。専門は教育方法学。文部科学省「ネット安全安心全国推進会議」委員、安心ネットづくり促進協議会普及啓発広報副委員長などを歴任。著書に『教師が知らない「子どものスマホ・SNS」新常識』(教育開発研究所)など。