「赤本」の愛称で親しまれる、大学受験の定番参考書「大学赤本シリーズ」。志望校合格に向けて効果的に使う方法を、世界思想社教学社編集部の中本多恵さんに聞いた。(文・写真 木和田志乃)

得意、不得意を把握する

―過去問を解くときは、どんなことを意識すると志望校合格に近づきますか?

自分の実力と、大学の入試問題とのギャップをどれだけ埋められるかを意識しましょう。受験は基本的に複数科目の合計点、国公立であれば共通テストと個別試験の合計点で合否が決まります。「志望校に行くための点をどう取れるか」という勝負で、合格した人でも、科目ごとの得点は異なります。模試で高得点が取れていても、過去問がまったく解けなければ合格できません。

大学受験の定番参考書・赤本。今年からデザインを刷新した 

普段100点満点のテストで、英語80点、国語80点、社会50点を取っているとします。この場合は英語を10点伸ばすより、社会を30点伸ばす方が労力に対して効果が出やすいです。自分の得意、不得意を把握して「総合得点を上げる」という考え方をしてください。

科目の中でも自分の不得意分野が出題されている場合もあるでしょうから、志望大学の問題を把握して、自分の「苦手」とのギャップを埋めていくことが必要です。

ミスは徹底的に分析する

―本番の試験は制限時間がありますが、過去問を解く段階でも時間は計って解いた方がいいですか?

最初は時間を気にせずに解くといいと思います。過去問を解いて大学の傾向をつかむほか、解けない場合も、時間をかければ解けるのか、そもそも理解が足りずに解けないのかを把握してほしいです。入試直前期からは時間を測って解くのがおすすめです。

採点までが赤本活用のコツだ

自分で採点するときは、ケアレスミスによる間違いなのか、解くための発想すら浮かばなかったのかなど、解けなかった原因を把握しましょう。弱点を克服し、解けるようになるまで解くのが大事です。ただ何回も同じ問題を繰り返すと答えを覚えてしまうので、間隔を空けるなど工夫をしてみてください。1回分解かずにとっておき、本番直前に解いてみるのも一つの手です。

解答用紙を使って本番を想定

―時間帯など、試験本番に近い環境で過去問を解くことは大事ですか?

編集部に寄せられる合格体験記には、本番でパニック気味になったという声や、試験当日のスケジュールに合わせて過去問題を解いたら午後には疲れが出てくることがわかったという体験談もありました。本番と同じスケジュールで解いてみるなど、想定することは大切だと思います。

赤本オンラインには、掲載許可を得た大学の解答用紙を載せているので、参考にしてください。入試直前にアクセスが伸びるので、どの程度の解答スペースに記述するのか本番に近い形で試したい受験生は多いようです。

―高校生にぜひ読んでほしい、編集部おすすめのポイントを教えてください。

「合格体験記」を読んでモチベーションを上げたという声や、大学生活が書かれた「在学生メッセージ」を見て、大学入学後の楽しい生活を想像してやる気を出したという声を読者から聞きます。これらのコーナーを熟読した編集部スタッフも多く、勉強に疲れたときや合格できるか不安になったときなどにおすすめです。

出題傾向が似ている他学部の赤本も使う

―大学や学部ごとに赤本の使い方は変わりますか?

出題傾向だけでなく、受験の形式や日程は大学や学部によってまったく違います。志望大に合わせて利用してください。

例えば全学統一型の入試で、入試日程も多く設けられている大学があります。この場合は自分が受験しない日程の過去問も利用できるので、過去問演習が豊富にできますよね。全部解くことをおすすめします。

学部ごとに入試を行う大学では、自分の受ける学部が中心になるものの、出題傾向が似ている他学部の問題が参考になることもあります。学部別入試でも傾向が全く同じ大学もあります。また、学校推薦型選抜と一般選抜で出題傾向が近い大学もあります。学部や受験方式にかかわらず、志望大の問題を全部見てみることが大事です。

 

なかもと・たえ 世界思想社教学社編集部。「赤本」の編集に携わり約12年。これまでに約300冊の赤本編集を担当。他にも『赤本手帳』「リスニングアプリ」「赤本ノート」や小論文・現代文・日本史の学習参考書などを手掛ける。