「赤本」の愛称で親しまれる、大学受験の定番参考書「大学赤本シリーズ」。1冊に大学や学部ごとの過去問題や解答・解説、大学の概要や出題傾向、対策法などが収録されている。いつから、どうやって取り組むべきか。赤本を出版している世界思想社教学社の中本多恵さんに聞いた。(木和田志乃)
志望校が決まったら一度解く
―赤本はいつから取り組むのがおすすめですか?
志望校が決まったら、まずは一度開いてみるのがおすすめです。大学入試の問題は大学や学部によって、同じ科目でも出題傾向や問われる力が異なります。例えば、英語でも文法問題が多く出る大学もあれば、読解問題が中心の大学、さらには読解の中でも本文の要点をつかめているかをメインで聞く大学もあります。志望校が決まったらまず過去問1年分の問題を解いてみるのがよいでしょう。
志望校が決まったばかりの段階では、学習が追いついておらず、問題が解けないこともありますよね。そのため、「最後まで赤本は手を付けずに『とっておいた』」という受験生も多いです。でも、受験直前に解いてみて「こんな問題が出るんだ」と分かっても、もう勉強のしようがないですよね。そうならないように、早いうちに傾向をつかむのが大事です。
習っていない範囲があっても役立つ
―習っていない範囲が多くても、過去問に手を付けることは効果的なのでしょうか?
例えば2年生や3年生の初めだと「日本史や世界史の近現代史はまだ学校で十分に習っていない」など、解けない問題もあると思います。でも、「近現代史がどれぐらい出題されるか」という傾向をつかんだ上で授業を聞くと、受験にすごく役に立つんです。先取りして解けるようになる必要はないと思いますが、早めに過去問を見るのはマストだと思います。
ちなみに赤本は毎年5月以降に刊行されますが、3月、4月も前年度版がよく売れています。特に難関大学ほど早くからチェックしている受験生が多いです。
「合格最低点」と「傾向と対策」をチェック
―赤本は問題以外にも、出題傾向や合格体験記などいろいろな情報が掲載されています。使い始める際は何から読めばいいですか?
合格最低点と「傾向と対策」です。赤本には志願者数や倍率など大学ごとの入試データが載っていて、合格最低点も載せている大学が多いです。合格の難易度は同じでも、難問が出題され合格最低点が低い大学もあれば、問題が易しめで合格最低点が高い大学もあります。合格に必要な点数を分かっていることは受験勉強を進めるうえで大切ですので、まず目を通してほしいです。
出題傾向に応じて、対策も変わります。「傾向と対策」には過去数年分の出題傾向、おすすめの参考書・問題集と勉強方法が書かれています。この二つが赤本で勉強する最大のメリットだと思うので、ぜひ活用してください。