試験で点数が伸びず古文・漢文に苦手意識を持っている生徒も多い。そんな高校生のために、参考書に詳しい塾講師の綿引和巳さんにおすすめの参考書を教えてもらった。(木和田志乃)

おすすめの古文・漢文の参考書は?

私大と国公立大で傾向が全く違う

―古文・漢文はどんな参考書がありますか?

古文・漢文は大学入学共通テストと私立大と国公立大の入試問題では出題傾向がまったく違っています。実際の入試問題をもとにした参考書が多いんですが、大半が私大向けと国公立大向けの問題が混ざっていて、1冊ですべてを対策しようとしています。本人がやりたい問題と問題集の構成がかみ合わなくなっていますが、この問題を解決する参考書は少ない、というのが現状です。

【古文】苦手な人は単語から固めて

―古文が苦手な人におすすめの参考書を教えてください。

古文は文法や単語が分からなければ、問題が解けません。まずは『基礎からのジャンプアップノート 古典文法・演習ドリル』(旺文社)をおすすめします。ページの上段に基礎事項や活用がまとめられていて、下段にチェック問題という構成で、基本事項を整理しながら身に付けていけるワークブックです。

ページ数が少なく、古文の単語をあまり覚えていない人でも解けるように考えられているので、古文に苦手意識がある人にも取り組みやすいと思います。シンプルですが必要な事項が網羅されていて、練習問題もできるワークブックです。

―では、得意な人におすすめの参考書は?

ある程度文法事項が分かっている人向けには『古文レベル別問題集1 文法編』(東進ブックス)。文章を正確に読み取るための文法を学べます。簡潔にまとめられた基本的な文法事項の要点を覚えてから、問題演習と解説をする、という作りになっています。

この問題集では、例題をカラーで単語分けをしていく品詞分解の解説が多いです。繰り返しやっていくので品詞分解が得意になりますし、文法の知識が定着します。問題量もそれほど多くはなく、古文に時間をあまりかけたくない生徒にも向いています。全6巻あり、シリーズ間のギャップがないように作られているので、順番に取り組んでいけば問題ないと思います。

ただし、本書は1でも「単語が分からなくて問題が解けない」と言われることもありますので、先に古文単語を勉強しておくとよいです。そこですすめているのが『覚え方別攻略 古文単語340』(Z会)。語彙(ごい)が少ない人向けに「語源から覚える」「漢字から覚える」など、覚えやすいように工夫されています。

【漢文】センター試験の過去問も活用して

―漢文が苦手な人におすすめの参考書を教えてください。

漢文は共通テストだけで必要な受験生も多いですし、文学部以外では受験科目に入っていない場合もあるためか、参考書自体が少ないです。

漢文の基礎から学べる『漢文 ヤマのヤマ』(Gakken)は右ページに句法の形が大きく示され、その後に例文と解説があり、左ページに演習と解答と解説があるレイアウトで見やすいです。基本的な事項から平易な言葉でていねいに解説されていてわかりやすく、演習もたくさんあります。漢文は句法さえ押さえればいいというわけではありません。漢文の漢字は現代の日本語とは違う意味や読み方があります。この参考書では「読みのヤマ」という項目で漢字もしっかり学べるようになっています。

『漢文早覚え速答法』(Gakken)もおすすめ。この参考書の特徴は、漢文の句法を漢字以外の読み方を覚えるという、著者が独自に考えた方法で学習するところです。覚えるポイントは10だけと最小限に絞っていますので、効率的に覚えられると評判がいいです。

―得意な人におすすめの参考書は?

『漢文道場[基礎編]』(Z会)は難関大学、特に文学部志望者に長く使われてきた『漢文道場』の入門書として発行された参考書です。句法が簡潔にまとめられ、読解問題にも取り組めます。問題解説もなぜその選択肢になるのかなど詳しく説明していて、レベル的には共通テストまで対応できるように作られています。基礎編と言ってもまったくの初学者向けではなく、ある程度知識がある人向けですが、時間に余裕がなければ『漢文道場[基礎編]』から学習を始めてもいいと思います。他にもセンター試験の漢文は良問が多いので、問題集と合わせて使ってほしいですね。

綿引和巳さん 

わたひき・かずみ Seras学院学院長。1987年生まれ。三重高校(三重)、京都大学理学部卒業。同大学院理学研究科生物科学専攻修士課程修了。通信系企業にて医療情報のシステム構築に従事した後、2019年高校生専門学習塾Seras学院(大阪府茨木市)開校。これまで高校生に1000冊以上の参考書を提案。